「あ、佐野」
廊下で声をかけてきたのは喜多さんだった。
「昨日の勉強会、大変だったな」
喜多さんは苦笑いをする。
「はい…。ていうかあんなに勉強できない人がいるなんて知らなくて吃驚しました…」
そう言うと、喜多さんは笑う。
「星降は勉強結構できるんだけどな。昨日はいなかったから」
「え……、星降さん勉強できるんですか?」
「ああ、確か前のテストではトップ10には入ってたはず……佐野、順位見てない?」
「あー……、自分の見たぐらいで他はあまり……」
「そうか。まぁ勉強わからないところでもあったら星降にでも聞いてみたらどうだ?もちろん俺でもいいけど」
確かに星降さんって頭は悪そうじゃない。むしろ要領が良さそうなイメージがあって勉強とかちゃんとできそう。
「じゃあわからないところでもあったら聞いてみようかな……教えてくれるかわかりませんけど」
喜多さんは「確かにな」とクスクスと笑った。
「……あ、そろそろ授業始まるな。じゃあ、部活のときにまた」
「はいっ」
そして部活時間、私はいつもより早めにきてしまった。
「まだ誰もきてない……」
何もしないのは勿体ない。ううん、どうしようか。
「…ドリンクのボトルとか用意しようかな」
そして私はボトルをとりに行った。
「…よいしょっ」
私はボトルを両手いっぱいに抱え込む。
「結構多いけど…軽いから平気かな」
そしてそれを持ち出そうとしたとき
「若葉?」
「!はーい」
誰かきたのかな、と思い返事をする。そしてその声の主を確認する。
「………ほ、ほし、ふ…るさ、」
私の名前を呼んだのは星降さんだった。とっさに出た声はまともに言葉にならなかった。
「なにその反応。どもりすぎでしょ」
「す、すみま……せ……っ」
どうしよう。緊張しすぎて何を話したらいいのか判らない。
そういえば好きって気づいてから直接会ったのはこれが初めてだ。顔が赤くなってるのが鏡を見なくてもわかる。
その顔を隠そうとうつむく。
「……どうした?」
「っ!」
星降さんが私の顔を覗き込む。必然的に距離が近くなって心臓が高鳴る。
そして力が自然と抜けてしまい、
ガシャンッ
「いったぁ!」
ボトルを落として、そのボトルは私の足に直撃したのだった。
「…あーあ、何やってんの」
保健室。星降さんに連れられやってきたが、先生がいなかったので星降さんが手当てをしてくれている。
「少し赤く腫れてるけど……ま、これで平気かな」
「あだっ」
湿布を貼った足をぺシン、と軽く叩かれる。
ボトルに直撃された私の足は予想外にも腫れていた。そして、それだけでは済まず、
「………コレ、どうしましょうか…」
手には数本の私が落としてしまったボトル。そのボトルにはヒビが入ってしまっている。
「ヒビの入ったものなんか使えないでしょ」
「で、ですよね…」
さっきまでは焦ってしまってたのに、ボトルの衝撃で気づいたら普通に話していた。これはこれで良かった……かな?
「とりあえず、俺はグラウンド行ってくる。何も言わずににきたし」
そういえば既に部活が始まる時間になっている。
「ついでにボトルのこと話してくる。若葉はここで待ってて」
星降さんが保健室から出ようとする。。
「え……なんでですか?」
「なんでって……無理に動いて悪化されるのも嫌でしょ」
「…まぁ確かにそうなんですけど…」
星降さんは「それなら」と言って私に近寄り、
「いい子にして待ってなよ。あとで迎えにくるから」
と、そっと頭を撫でた。
「っ!!」
あっという間にぼっと顔に熱が溜まる。そんな私の事も知らずか、星降さんは今度こそ保健室から出て行った。
「熱まで出ちゃいそう…」
意味もなく手で顔を仰いで冷まそうとする。
「……いいこに、待ってる」
私はその辺にあった椅子に座り、星降さんの言う通り、「いい子にして」待っておくことにした。