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今日は日曜日。私は公園のベンチに一人で座っている。決して一人ぼっちで寂しくいるワケじゃない、断じて。待ち合わせをしていて、相手を待っているところだ
「……遅すぎやしませんか」
待ち合わせは13時。待ち合わせ時間から30分が経過した。何かあったのだろうかと一瞬考えたが星降さんの事だからそんな事はないだろう。
「ごめん遅れた」
実際はごめんとか思ってなさそうなこの声は、
「星降さん…」
「何ふくれっ面してんの」
「星降さんが来るの遅いから」
「その顔ぶさいくだからやめた方がいいよ」
「はっきり言わないでください!」
待ち合わせ。日曜日に一緒にお出かけ。この条件だけ見たら世間一般的に見たらデートだろう。まあ実際は
「ボトル、さっさと買いに行くよ」
そう、私が壊してしまった備品を買い出しに行くだけ。

ヒビの入ったボトルのことを話した星降さんは、それなら新しいボトルを買ってこいと言われたらしく。それで買いにいくべきなのは私なので私だけで行こうとしたら星降さんも付き合ってくれると言う。
なんの風の吹きまわしだ、と思えば「若葉、また新しく買ったボトル落としそうだから手伝うため」と言った。失礼ですね本当に。とか思いながらも、荷物を持ってくれるというのは助かる。

「ごめんなさい…私なんかのせいで」
「本当だよ全く」
二人並んで歩き、目的地にやってくる

「えーっと……お金は星降さんが預かってるんでしたっけ」
「あぁ、うん」
適当な相槌を打つと、星降さんはジーンズのポケットから小さめの封筒を出した。
「ほら、これの中」
「あ、じゃあ私買ってきますね」
私はその封筒を受け取り、店内に入った。

***

「星降さん〜買ってきましぴゃっ!」
「なにやってんの」
新品のボトルが入った紙袋を抱える私は、店を出た途端バランスを崩す。
「こ、これ案外重いんですよ……」
「ふーん」
反応それだけですか。ていうか荷物持ち手伝ってくれるつもりできたんじゃ…。まぁ頑張れば私一人でも何とか持てる量だけど。なんて思っていると、
「ん。」
「……は、」
急に手を差し出された。
「え、そんなあげられるようなものは…あ、お釣りですか?それなら……
「違うよ馬鹿」
星降さんはそういうと、私から荷物を奪い取った。
「荷物渡せって意味に決まってんだろ」
溜息を吐いて、呆れられた。
「…って、いや、あの!全部持ってくれるのはさすがに……半分にしましょうよ!半分に!」
「若葉さ、力仕事ぐらいは男に任せようって気はないの?」
「ありませんっ。……特に星降さんの場合は見返りを求めてきそうですし…」
「今の台詞言えるもんならもう一回言ってみな」
「すみませんでした」
「それでよし」と星降さんは言うと、荷物を持ったまま、すたすたと歩いていく。
あ、ちょっと待ってくださいよ!荷物せめてちょっとぐらい持たせてくださいって」
星降さんを追いかけそう言うと、急に立ち止まる。
「あだっ」
星降さんは私のほうを向く。
「それならさ、」
星降さんは少しだけ、はにかむような表情で、
「これは俺から若葉への優しさの一つってことで……いい?」
そんなことを言う。
「……うぁあ……」
私は思わず妙な声を出して、その場にしゃがみ込んで顔を伏せた。
「若葉?こんなところでしゃがみ込むなよ、なに急に」
こんなの無理に決まってる。絶対今の自分顔赤い。
そんなこと言われたら頼らずにいられない。しかも、あんな表情見せちゃって。
そんな顔、初めて見た。
「……別に、なんでもない、ですよ」

ああもう、前よりも好きになっちゃうじゃないですか。
こんなんじゃもうどうしようもない。後戻りなんてできない。
そのうち本音が溢れ出してしまいそうなくらい、好きだと実感してしまった。