19

「これで今日の部活は終了だ」
喜多さんの言葉で今日も部活が終了した。

私はタオルやボトルを片付けに行く。
「佐野、片付けお疲れ」
片付けが終わりサッカーコートに行ってみると、そこには喜多さんがいた。
「喜多さん、帰ったんじゃなかったんですか?」
「うん、そのつもりだったんだけど。でも今日は少し調子が悪かったから練習してたんだ」
「そうなんですか…」
私がそう反応すると、喜多さんは「キャプテンが迷惑かけたら駄目だろ?」と言った。
真面目なんだなぁ。
喜多さんは汗をタオルでぬぐう。
「……あ、そうだ。佐野」
「はい」
「練習、見ててくれないか?」
「…え、」
急な提案に思わず驚く。
だって、私が見てても応援できる程度で何もアドバイスできない。
それを伝えると喜多さんは小さく笑って、
「別にそれはいいんだ。一人で練習するよりも誰かに見てもらったほうがなんとなくやる気が出るんだ」
「そ、そうですか…?」
「うん、まぁ佐野が嫌ならいいんだけど……」
そんなことを言われては断りづらい。…とはいえ、喜多さんの練習を見てみたいとも思った。
「…じゃあ、私なんかでよければ」
「本当かっ?」
私の返事に、喜多さんは声のトーンを上げた。
「ありがとうな」
そして、屈託なく笑った。


そして私は、しばらく喜多さんの練習する姿を眺めていた。練習を見ていたら、気づいたら辺りは真っ暗になる。
「もうこんな時間か…。ごめんな、こんな時間まで付き合わせて」
「いえ!私見てて楽しかったです!」
「……そうか?」
喜多さんは少しだけ、照れくさそうに頬を赤くした。
練習している間、私は大して口出しはしなかったけれど、不思議とつまらなくはなくて、見ているこっちが空気に巻き込まれるような感じになった。
「そういえば佐野、帰るのは一人…だよな?」
「あ、はい。友達も既に帰ってるんで…」
「そうか。それならさ、」
喜多さんは私の手を引いて、
「佐野の家まで送ってくよ」
そして、その手を引いたまま校門を通り抜ける。
「え、いやあの!大丈夫ですよ!?そんなの申し訳ないし……」
「女子が一人で夜道を帰るのは危ないだろ」
「で、でも……」
「いいから」
喜多さんは意見を変えるつもりはなさそうだ。
分かれ道で、どっちなのかと聞かれ右だと私は答えた。
送ってもらうのは申し訳ないが、正直なところ嬉しい。
「……喜多、さん」
「うん?」
声をかけると喜多さんは振り向く。
「えっと、…ありがとうございます。…助かります」
そう言うと、
「…ん、」
何も答えず頭をくしゃりと撫でられた。
そして、すぐに前を向いて歩きだした。
「………」
夜道だからはっきりとはわからなかった。
後ろから見た喜多さんの耳が赤くなっていたのは気のせいかもしれない。