【喜多視点】
──「……俺は、佐野が」
俺は、無我夢中にそんなことを口走った。佐野が監督に呼ばれたから途中で遮られてしまったけれど。
……正直、助かったと思ってしまった。もし、あのまま口走っていたら佐野は、どう反応したのだろうか。
こんなこと、容易には想像なんてつかないな。でも、言わなくて良かったのかもしれない。少なくとも、今は。
佐野のことが好きだ、なんてことは。
佐野が、星降のことが好きだということは、なんとなく察していた。
星降を見る佐野の目がそうだった。俺と話すときとは違う、きらきらとした目で星降を見る。
悔しくなかった、と言ったら嘘になる。
当たり前だ。好きな人には、自分を見てほしいだとか欲を出す。でも、それは無理なことだった。佐野が見ていたのは星降だから。
傍にいるだけで嬉しそうな、幸せそうな。そんな表情を見せるのは俺じゃなかった。
よりによって、チームメイトか。そんなことを思いながら。
一瞬でも俺自身を見てくれたら。そんな、ありもしないことを願いながら。
「……諦める、なんてことは俺らしいとは言えないな」
空想に夢見て、明日を描く。