24

星降さんとの事を美奈ちゃんに話せば、美奈ちゃんは声を荒げた。連絡もなしに学校こなかったら心配する、と。
ごめんと謝ると、美奈ちゃんは顔を伏せた。
──「学校こなかったことはもういい。……若葉はちゃんと頑張ったわよ」
ぎゅう、と抱きしめられた。
「結果はどうであれ、若葉は星降くんを好きになることで成長したのよ」と、涙声が耳元で聞こえた。
なんで美奈ちゃんが泣くの。でも、それは口に出さないでおいた。そんなふうに言われたら、また泣きそうになった。

***

「うわーっ、天河原中のマネージャーだー!」
「え、何、天河原の情報でも教えてくれるの?」
私は今、雷門中にきている。そして私を取り囲むのは雷門サッカー部の人達。
「……っ!!」
やたら見られると緊張してしまう。
「佐野ー?大丈夫かー?」
隣にいる渡部くんが声をかけてくれる。
「だ、大丈夫」
何故天河原中の生徒の私が雷門中にいるのか。それは、美奈ちゃんが気分転換でもしたらどうだと、渡部くんに頼んで雷門サッカー部を見ることになった。もちろん、今日は休日だ。

「えーっと…先輩?は名前なんて言うんですか?」
一年生かな、男の子に問われる。
「…佐野若葉です」
「佐野先輩ですかーっ」
なんて元気な子だろう、思わずたじろいでしまった。
「あ、俺松風天馬って言います!」
ニッと笑って手を差し出されて、私はそれに応えた。
「よろしくね」
すると、「僕もーっ」と小さな男の子までやってくる。それに続いて他の人達とも挨拶を交わす。
と、そんなとき
「……ん?」
その中にいる一人が目に入る。見覚えのある男の子。
私の視線に気づいたのか、その男の子はこちらに視線を向けた。
「あ、若葉先輩じゃないですかー」
その姿、声。思い出した。
「こっ、この間の!」
思わず声を張り上げた。
その男の子は、この間河川敷で出会った子だった。
「知り合いなのか…?」
神童くんがおずおずと尋ねる。
「知り合いっていうか…」
「そうそう、知り合いなんですよ。と、いうか結構仲良くてー」
「へっ?」
隣からその男の子が口を出す。
確かに知り合いではあるけどそんなに仲良かったかな?
「そうだ、自己紹介してませんでしたね」
男の子は私のほうを見て、
「改めまして、雷門中サッカー部所属の1年。狩屋マサキです」
「マサキくん…か」
やっと、名前がわかった。何故か焦らして教えてくれなかったもんなぁ。



「奏者マエストロ!!」
練習が始まり、神童くんが技を繰り出す。
「化身?だったけ…神童くんに似てるね…」
「ぶはっ」
丁度近くにいた霧野くんが吹きだす。
「髪の毛とかな!」
霧野くんはその場で腹を抱えて笑いをこらえる。
「ほら、神童の方、見てみ?」
神童くんのほうを指さされ、私は視線を向ける。
「……!?」
今にも零れ落ちそうなぐらいに目に涙を浮かべていた。
「化身に似てるってのはなぁ!」
霧野くんは「ははっ」と笑う。
「別にほっといても大丈夫だから。少しでも豆腐的精神鍛えなきゃなんないから」
「とうふ…?」
霧野くんは「あー、笑った笑った。練習行くか」と神童くんのもとへ走っていった。
その向こうでパス練をしている天馬くん達や、シュートを練習している人達を遠目に見る。
「…たまにはこういうにもありだなぁ」
最近は、一気にいろいろあったからか、知らず内に少し疲れていた。深く考えず、ただこうやって笑っていられるのが久しぶりに感じた。
「若葉センパーイ。天河原中のマネージャーやってるくらいなら何か弱点とか知らないんですかー?」
遠くからマサキくんがそんなことを言ってきた。
「知ってても教えません!」
そう言い返してやる。

なんだか久しぶりに思いきり笑えた気がした。