25

今日は部活が休みで時間が空いてしまった。
「何かおすすめの本とかあるかな?」
図書室にやってきた。
「……佐野さぁ」
「うん」
「俺、全く本とか読まないんだけど」
あっさりと返事をしたのは安藤くんだ。
意外なことにも、安藤くんは図書委員だ。
「じゃあ何で図書委員になったの?」
「やりたがるヤツいなくてジャンケンしたら負けた」
安藤くんは「超メンドい」と顔をしかめる。
「……でもちゃんと仕事はやるんだよね」
へらっと笑ってそう言うと、安藤くんは照れ臭そうに視線を逸らし、
「俺がやらなかったら他の委員に迷惑かかるだろ」
と、言う。
「えーっと…本読まないなら……あ、人気の本とかある?」
「あぁ、人気のあるやつなら向こうに並べてあるから」
それを教えてもらうと、私はそれを見に行こうとした。
「……佐野、ちょい待て」
「なに?」
「星降見なかったか?」
「っ……」
星降さんの名前に一瞬反応してしまった。でも、すぐ切り替えて、
「今日は見てないよ。星降さんに何か用事でもあった?」
「いや、用事はねぇけど…。最近、様子がいつもと違うからさ」
少し心配そうな声色でそう話した。
「様子が違う…って?」
すると、安藤くんは言いにくそうに、
「……佐野、星降となんかあっただろ」
何を言われたのか一瞬判らなかった。
何か、確かに何かあった。でも、安藤くんはそれを知らない。
「…あ、悪い。聞かれたくないならいいんだけどさ」
安藤くんは簡単に引き下がった。
「星降がさ、お前の話題となると避けたがるんだよ。喧嘩でもあったかなーって」
「……そう、なんだ」
星降さん、私の事避けてるんだ。
「悪い、引き留めたな。本探してたのに」
「ううん、別にいいよ。それじゃあ、」
私は、本来の目的を思い出し、さっき言われたところへ行く。


表紙や見出しを眺めながら本を見ていく。その中に1つ、表紙からして興味深そうなものを見つけた。
私はそれに手を伸ばす。が、その隣にもう一本の手
「あ」
誰かと思い隣を見ると、その人は喜多さんだった。
「佐野。これ、いいよ」
そう言われて、喜多さんに取ろうとした本を差し出した。
「え、いや別にいいですよ…。他の探しますし」
「遠慮しなくても、」
「いやいや、遠慮なんて……」
「でも…」
ううん、これじゃあ埒があかない。
「これは喜多さんが借りて下さい!」
私は本を喜多さんに押しつけた。
喜多さんは少し戸惑いながらも、
「わ、わかった。ありがとう」
と、お礼を言った
「喜多さんって結構本読むんですか?」
「いや、そうでもない。たまに読むぐらいかな…。佐野は?」
「結構読みますよ。いろんなジャンルに手をつけちゃってます」
「へぇ……なんか佐野って本読むの好きそうだしな」
他愛もない話しをしていて、不意に思い出した。

───「……俺は、佐野が、」

何かを言おうとした。何と言おうとしたんだろう。
私が、何だろう。
「喜多さん、
「うん」
「この間、喜多さん何か言いかけましたけど…なんて言おうとしたんですか?」
問いかけると、喜多さんは一瞬驚いたような表情を見せた。そして、「え……っと、」と言葉を濁らせる。
言いにくい事なのかもしれない。
「あ、あの。やっぱりいいです。言いにくいことなら…」
「待って、話す」
意を決したような声で、喜多さんは口を開く。
「……言わせて、ほしいんだ」
真剣な眼差しで見つめられる。
思わず視線を逸らしたくなってしまったけど、そんな事はできなかった。
「今の佐野に言うことじゃないかもしれない。言っても困らせるだけだ」
私は口を挟まず、喜多さんの言葉に耳を傾ける。
「言うべきじゃない、でも言わなかったら俺は絶対に後悔する」
喜多さんが握った掌に力を入れたのがわかった。
「……佐野。俺は、佐野が」
開いていた窓から風が入り込む。

「好きなんだ」
風の音すらも無音に感じた。

けれど、喜多さんの言葉ははっきりと聞き取れた。
「………」
私は何も答えることができなかった。その代わりに出たのは、