「は!?転校!?」
美奈ちゃんの声が耳をつんざく。いつものように学校に行き、転校のことを伝えた。
「ちょ、美奈ちゃん。周りの人が見てるから声を…っ」
「黙ってられないわよ!急すぎるでしょ」
美奈ちゃんはついに今にも泣きそうな声になった。
「……どこに転校するの」
「え…っと、雷門中」
すると、美奈ちゃんは安心したようで、
「…なんだ、もっと遠くに行っちゃうのかと思ったじゃない」
「うん、そこは配慮してくれたみたいで…。おじいちゃんの家に住むことになったの」
「そう…。ま、雷門中なら利殊もいるんだし。何かあった頼っておけばいいわよ」
「うん、そうさせてもらう」
私がそう言うと、美奈ちゃんはニッと笑う。
「そのうちにでも雷門中に若葉に会いに行くから」
そんなふうに言われると安心できる。転校したら美奈ちゃんに会う機会が減るし、少し不安だった
「あ、じゃあサッカー部の人達にも伝えなきゃいけないのよね」
「うん、今日の部活時間に伝えようかなーって」
「…星降くんにも、よね?」
突然のその名前に言葉に詰まるが直ぐに口を開く。
「ううん、星降さんには伝えない」
美奈ちゃんは、目を見開いた。そりゃあ、驚くだろう。
でも、なんでだとかそんなことは聞かれなかった。
「そう」
短く、答えた。多分、気を遣ったんだろう。
「あ、そういえばね…」
私は話題を切り替えた。
***
「それは…残念だな……」
本当は部活時間に言おうと思ったけれど、喜多さんには教室まで行き、伝えに行った。
「急にすみません。マネージャーなのに…」
「いや、それはいいんだ。もともとサッカー部にはマネージャはいなかったからな。前に戻ったと考えれば……」
そこまで言って、言葉が途切れた。
喜多さんは「そうか……」と呟いた。
「…それにしても、わざわざ伝えにきてくれたのか?部活のときでも良かったのに」
「それ…は、なんででしょう…」
「自分でもわからないんだ」
喜多さんはクスクスと笑う。
「でも…」
喜多さんは私の顔をじっと見つめて、
「嬉しい。佐野にとっては深い意味はないだろうけど……」
微笑んで、喜多さんはそう言った。
そして、
「俺、佐野のこと諦めてないから」
今度は薄く微笑む。
「時間が空いたときにでも、会いにいっていい?」
顔を覗き込むように、聞かれる。
美奈ちゃんに似たようなことを言われたのに、喜多さんが言うと違って聞こえた。
「……はい」
なんだか恥ずかしくなって、声が小さくなった。
それでも俯いてた顔を上げて
「待ってます」
そう、言ってみせた。
結局、私は喜多さんに伝えたあと、西野空くんと隼総くんにタイミンよく会ったから転校のことを伝えた。
西野空くんが「若葉がいなくなるとつまんなくなるなぁ…」なんて言ったのは敢えて気にしない。
そして部活時間。丁度その日は、星降さんは休み、ではなくサボったために会わなかった。
良かったと安心したのか、がっかりしたのか。自分でもよくわからなかった。
「…あと、何日だろう」
星降さんに会えなくなるまで、あと何日。