生きるため、生きていることを忘れそうな毎日なのだ。まるで、よくできたジオラマの世界に取り残されたみたいに、背広の大人も派手好きな若者も片付けられて、熱気を増す太陽みたいな照明で照り返すビルの鏡面に、瞳を細める事すら許されずに。迫る夏を感じながら、ただここで、意味を為さない信号の変わるのを待ち続ける。そんな事だけが生き様である、置物になったようなのだ。ピロン。間抜けな音と共にポケットが震える。
『暑い。かき氷食べたい』
「……っふ」
確かに、なんて考えて口許が緩んだ。シロップを買って帰ろう。僕は赤で、君はきっと遠い空のような色で、二人して馬鹿みたいに舌を染めよう。そうやって僕達は、今日も、案外素直に生きていくのだ。