私の家の前で、浴衣の私とジャージの暁が並ぶ写真。

夏祭りだと言うのに、暁の表情は硬い。





「暁、まだリンゴアメ食べ終わってないの」

「飽きた……」

「だから本当に食べれるの?って聞いたのに」



最近の暁はずっと、どこかぼんやりしてる。

いつものぽやぽやした感じとは違う、固い空気。



暁の中学での野球は、1人のまま終わった。

1人で練習し続ける暁に、何もしてあげられなかった私には

何も聞けないし、言えない。

どう振る舞えば良いのかも分からない。



「ねえ、志保ちゃん」

「なーに?」

「……なんでもない」



帰り道、歩みを止めた暁の手が私の顔に伸びてきた。

向き合ってみても、真っ直ぐに目を見つめてみても、

暁の心はどこか別の場所にあるみたいだった。



「大丈夫だよ」

「え、」

「大丈夫。大丈夫だよ、暁」



私の頬にあった手をしっかりと掴んだら、

一瞬びっくりした顔をした暁が、困った顔になったから

手を繋ぎ直して、笑顔で大丈夫だよと繰り返した。

何がと聞かれてもこまるけど、ただ

迷子になった子供みたいな暁を、安心させたかった。





知ってるよ、チームメイトの中で孤立してた事も

いつも1人で高架下で練習してた事も

ページも捲らずに雑誌の1ページをずっと見てた事も

東京の学校に行きたいって先生に打ち明けた事も

私には頼りたくなくて全部隠してるつもりなのも。



中3の夏。

さよならへのカウントダウンは、もう始まってる。

暁の腕の中で、自分の無力さに唇を噛み締めた。


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