私の両親は写真を撮るのが好きだった。

記念日やイベントはもちろん、日常の何気ない姿も。

そして、その結晶がこのアルバムだ。





暁が東京に旅立つ1週間前に開かれた

壮行会と称される、ささやかな食事会。

そこで私の両親が、2人のアルバムだと贈ってくれた。

私と暁が初めて会った時から撮り溜められた写真の数々。

2人きりになった暁の部屋でそれをなぞりながら

私は泣いた。暁は泣かなかった。



「なんだよ薄情者め。感動しないの」

「してる、すごく嬉しい」



貰った時にはアルバムを抱きしめて喜びに浸っていたけど

今はそのアルバムを見ながら難しい顔をしていた。



「これ1冊しかない。どうしよう」

「暁が持ってていいよ。家にネガあるだろうし」



なんて言いながら、

私が暁に持っていて欲しいだけなのに。

そんな願いとは裏腹に、考え込んでいた暁は首を振った。



「志保ちゃんが持ってて」

「え、なんで、いいよ。暁が」

「大人になったら、貰いに来る」



それじゃあ、意味がないんだよ。

私たちは一緒に居たから成り立っていた関係で。

離れちゃったら幼馴染なんて、大した意味もない。

大人になったらアルバムなんて、どうでもよくなる癖に。

なんて思いながら

私はへたくそな笑顔を浮かべるしかなかった。



「分かった。今日の写真も、現像できたら加えとく」





このアルバムへ納められたツーショットは

この日の写真が最後だった。



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