暁が初めて甲子園の地に立ったのは、

北海道を離れて約1年が経つ春休み。

アルバムの中にはたくさんの新聞記事や雑誌の切り抜き。

このころは、漠然とした不安を

こうすることでしか解消できずにいた。





高校1年の冬休み、やっぱり暁は帰ってこなかった。

「年末年始は練習が休みだっていうのに

 こっちには帰ってこないって言うのよ!」なんて

暁のお母さんが我が家でぼやいていたのは、2週間前。



「要らないとか、迷惑とか、思われてたらどうしよう……」



暁は北海道に戻らず、おばさんが東京へ行き

おじいちゃんの家で正月を過ごすと聞いた私は

渡せなかった誕生日プレゼントをおばさんに預けていた。



「高校生の男の子にぬいぐるみとか変だったよね。

 寮生活だし、周りに引かれてるかも。

 あー、やっぱ渡さなきゃ良かったかな……」



ベッドの上でゴロゴロと寝返りを打ちながら考えるけれど

お店の入口に置かれたシロクマを見つけた時、

私は確かに「暁にあげたい」と強く思ってしまったんだ。



数日後、戻ってきたおばさんから「喜んでたよ」と聞いて

ほっと息をついたものの、暁からの連絡はなく、

不在着信が残されたのは、それから2ヶ月以上経った

春の甲子園、青道高校の初戦前日のことだった。





「暁……志保です。

 えっと、センバツ出場おめでとう。

 あの時、新聞に載るの楽しみにしてる、なんて言ったけど

 まさかこんなに早く実現するとは思わなかった。

 明日の初戦、がんばってね。……じゃあ、おやすみ、暁」



何度も迷って悩んで、

微かに震える指で発信を押したのに

聞こえるのは機械的なアナウンス。

私には当たり障りのない言葉を残すのが精一杯だった。



それ以来、やっぱり暁からの連絡は途絶えたままだった。



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