満足げな表情を浮かべる暁と、ぎこちない笑顔の私。

写真に並び立つ二人の表情は対極にあった。





飛行機の時間もあって長居はできないけれど、

準決勝と同じように選手が出てくる場所へと足を運んだ。

前回と違うのは、暁の家族も一緒だということ。



取材に訪れた記者らしき人たちの波も去り、

今はOBであろう人たちに囲まれている暁が見えた。

チームメイトに囲まれる暁には感慨深いものがある。

ひっそりと喜びに浸っていると、こちらに気づいた暁が

周囲に何かを告げて真っすぐにこちらへ歩み寄って来た。



おばさんに促されて家族写真を撮られている最中、

おじいちゃんに言葉をかけられ嬉しそうにうなずく暁。

あの頃よりも一回りも二回りも大きくなっているはずなのに

昔と同じ表情をしているから、思わず頬が緩んでしまう。



「ほら、志保ちゃんも」

おじいちゃんたちとの写真を撮り終えたようで、

次に声がかかったのは私だった。

促されるままに返事をして暁の隣に並ぶと

隣からぐっと距離を詰められ、

その体で隠すようにそっと手を握られた。



「暁?」

突然の接触に驚いてその横顔を見上げかけたけれど

カメラの存在に一瞬にして現実に引き戻される。

焦りや緊張や羞恥、そして少しの喜びで頭がいっぱいで

どんな表情をすれば良いのか分からないまま、

シャッターが切られるのを待っていた。



「……優勝おめでとう。すごかったね」

「うん。ありがとう」

「ほんと、格好良かった」



この感動が伝わればいい。

そう思い手を握り返せば、更にしっかりと力をこめられる。

心臓が高鳴ると同時にシャッターが切られ、

するりと手がほどかれた。


「昨日、志保ちゃんと電話できてよかった」

「……うん」

「留守電も、あの日から何回も聞いてた」

「え、うそ、消してよ!」

「やだ」



顔をしかめて、頭一つ分も上にある顔を見上げてみても

本人は素知らぬ顔で視線を返してくるだけで。

そんな顔を見ていると自然に肩の力が抜けて、

仕方ないと諦めたところで、暁を呼ぶ声が聞こえてきた。

桃色の髪の男の子。多分、試合でよく見た小湊くんだ。



「また、電話して。留守電うれしいから」



私にはそれだけ言い残して、

家族とうちの両親にあいさつをして

駆けていった暁の後ろ姿を見送る。

人ごみに紛れていく背中の数字が輝いて見えた。



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