法律が手を出せないのであれば、こっちが体を張って思いきった手に出るしかないのさ。

昼休憩が終わりデスクに戻る。午後からの仕事までは約15分。ちらりと隣のデスクを見るが、いつもそこにある姿は、朝から無い。いつも隣で一生懸命仕事をしているなまえさんは、絶賛休暇中である。
机の上にはほとんど物がない。休暇中とはいえ、ここ本当に使ってます?って聞かれてもおかしくないくらい、整頓されているというか、物がないというか。先日僕が建設したチョコレートのピラミッドも、『休みの間にちょっとずつ食べようかな』と持って帰ってくれていたし。

数日なまえさんがいないだけでなんとも言えない寂しさを感じる。なまえさんが来るまで隣はずっと空きデスクだったのに。なまえさんにはゆっくり休んでほしいけど、でも早く一緒に仕事したいなあ、とも思いつつ僕は机に伏せてため息をこぼす。・・・なまえさん、ちゃんと休んでるかなあ。

ぼんやりと考えていると、近くでパシャリとカメラのシャッター音が聞こえた。その音のした方に顔を上げると、その犯人はニヤニヤとした笑みを浮かべるこうちゃんだった。

「・・・こうちゃん何撮ったの?」
「山本さんの写真です。なまえさんに送ろうと思って。」
「えっ!?」

驚きのあまり立ち上がってこうちゃんの所に駆け寄り、「消してよ〜!」と訴えるもこうちゃんは「あ、無理ですもう送っちゃったんで」とあっけらかんと言うだけだった。

「山本さん、なまえさんがいなくて寂しそうだな〜と思って、なまえさんに教えてあげました。」
「教えなくていいから!」

こうちゃんが僕にメッセージを見せてくる。僕が机に伏せた写真と、「なまえさんがいなくて寂しがる山本さんの図」という文章が、本当になまえさんに送られていた。

なまえさんの休みの邪魔にならないようにと思ってわざわざ連絡するのも控えていたのに。そんな僕の気持ちもつゆ知らず、こうちゃんは楽しそうになまえさんにメッセージを送っていた。

「こうちゃんのばか!」
「どうせ連絡するの我慢してたんでしょ?山本さんは気にしすぎなんですって。僕は我慢せずに連絡した方がなまえさんも喜ぶと思いますけどね。あ、既読ついた。」

思ったよりも早くメッセージを読んだ様子のなまえさんに驚くこうちゃん。マメな人なんだから基本返事は早いし、だからなまえさんの時間を邪魔するのが嫌で連絡は控えていたのに。そんなこともお構いなくなまえさんと繋がることが出来るこうちゃんを少し羨ましく思う。

「うわあ。」
「何?返事来たの?」

ため息をつくこうちゃんに問いかけるが、こうちゃんは無言で携帯の画面を差し出してくるだけだった。
そこの画面を見て僕も言葉を失ってしまった。

≪私も山本くんに会えなくて寂しいって伝えといて(´・ω・`)笑≫

しょぼんとした顔文字も可愛いし、そのあと送られるスタンプも可愛いし、何よりなまえさん自身が可愛い。こうちゃんもまさかこんなストレートな返事が来るとは思ってなかったようで、「あーあー、こんな事なら変に首突っ込まなくちゃ良かった!」と呆れたように笑ってデスクに戻っていった。 

なまえさんも寂しいって思ってくれてるんだ。例えそれがお世辞だとしても、上がるテンションと心拍数を抑える事が出来ない。口元が緩むのも抑えられず、通りすがりの河村さんに「山本、顔気持ち悪いよ」って言われたけど、それも気にならないくらい僕の心はふわふわと浮き足立っていた。なまえさん、どこか暇な時あるかな。寂しいって思ってもらえてるなら、僕もちょっとくらい、なまえさんの時間をもらっても怒られないよね?




【法律が手を出せないのであれば、こっちが体を張って思いきった手に出るしかないのさ。/コナン・ドイル】