私は死んだあとたっぷり眠る。
やらなければならないことが山のようにある。
動画の編集、記事の編集、論文、実験のレポート、教授に何故か頼まれた資料作成エトセトラ。
早めに銀行にも行かないといけないし、役所にも行きたい。冷蔵庫の中身も空っぽだから、水分や食糧も買いに行かないといけない。
多い。とにかくやる事が多い。足りない。時間が足りない。もう一人・・・いや二人か三人は私がいないと終わらなくない?
動画の編集も記事の編集も楽しいし、仕事は自分のキャパを超えてない。今日のノルマはほぼ達成しているし。論文や実験のレポートは平均よりは速いペースで進んでいるけど、この前直しをもらったやつが時間かかりそうで大変。ちょっと無理してる自覚はあるけど、出来ればこの調子で進めたい。食糧はコンビニで済ませればいいし、それすらも余裕がなければ最悪お兄ちゃんに頼める。銀行や役所は自分で行くしかないけど。
この状況で何が一番辛いって、突然教授から頼まれた資料作成よ。「適当にまとめてくれれば良いから」って言われて「はい分かりました」って言うやつがあるか?つまり、ある程度はちゃんとしたものを作らなければならないのだ。しかも期限は今週中。今日?水曜日。渡されたの?昨日。とりあえず昨日大まかな全体図を組み立てたが、猶予は今日含め3日しかない。完全に余計な仕事増やされた。ただでさえ今結構スケジュールかつかつなのに。本当に余計すぎる。教授の馬鹿。・・・言いすぎました、謝るので単位ください。
「あれ、なまえさんお昼は?」
『食べれたら食べる。』
「・・・それ絶対食べないやつでしょ。」
『ちょっと割と冗談抜きで今忙しくて。忙しいっていうか、締め切りに追われてて。』
隣の山本くんから声をかけられるけど、その方も見ずに受け答えする。栄養補助食品を齧りながら、プライベートで使っているノートパソコンを開いて睨めっこ。栄養補助食品なのにこれが主食って意味分かんなくなってるけど、そんな事言ってる余裕ない。とりあえずエネルギーが取れればなんとかなる。はず。
ちゃんと休息を取りながらやった方が、効率、パフォーマンスが良いのは分かってるけど、そんな事も言ってられないくらい本当に休む暇がない。本当にこの資料作成だけが余計なウェイトを占めてしまったため、この資料作成さえ終わってしまえば楽になるのだ。だから、あと2日、あと2日頑張って提出さえしてしまえば少しは楽になる。休むのはそれからだ。
『ふぅ〜・・・ん?』
一区切りついて深呼吸しながら背伸びをすると、デスクの上に何かが積まれている事に気付く。よく見てみるとそれは、コンビニにもよく売ってる四角いチョコで、何種類かあるそれがピラミッドのように積み上げられていた。
「あ、やっと気付いてくれた!」
犯人はやっぱり隣の席の山本くんだった。てっぺん用の最後の一個を積み上げようと手をのばす彼は、私が気付いたのを見てニコニコと嬉しそうに笑っている。
「いつ気付いてくれるかな〜?って思いながら積んでました。」
『全然気付かなかった。』
時計を見ると、もう少しで昼休憩は終わりそうな時間。
昼休憩の間に結構進める事が出来て明日までには無事終わりそうな感じになり満足だったが、山本くんがチョコのピラミッドを建設している事に気付かないくらい集中していた事に驚く。
「本当はちゃんとご飯食べてって言いたい所ですけど、今日はとりあえず糖分だけで我慢しておきます。」
口を尖らせて不満そうに言う山本くん。・・・この調子だと彼、今度はおにぎりとかサンドイッチとか積み上げてきそうだな。
「ちゃんと食べてくださいよ。」
『・・・ありがとう。とりあえず何粒かもらうね。』
「全部なまえさんの分だから!」
『えぇ?こんなに食べきれるかなあ?』
子供みたいに主張する山本くんがおかしくてつい笑ってしまった。そんな私をみて、山本くんも満足そうに笑っていた。
本当にこの人は、人の懐に上手に入り込んでくるというか。資料作成を命じた教授への恨みすらも消えてしまいそうなくらい、山本くんの優しさや明るさで胸が温かくなる。もう一度お礼を言い、もらったチョコを一粒口にして午後の仕事に入った。
【私は死んだあとたっぷり眠る。/トーマス・エジソン】