魔神フラウロスは強大な力をもって、蹂躙する。
オルレアン以降召喚に応じてくれたエリザベートや清姫も、フラウロスの魔力波で吹き飛ばされてカルデアへ強制帰還した。
《━━━━━━》
無数の眼光が蠢き、黒い魔力の塊を放つ。
その魔力波に呑まれたネロがとうとう膝をついた。
「ネロ!」
荊軻が素早く駆け出してネロを前線から遠ざける。
ネロを失えば本末転倒だ。
その間にアーサーが躍り出てフラウロスの注意を一身に引く。
「魔力増大!でかいのが来るぞ!」
ドクターのナビにマシュへ声をかける。
「マシュ、宝具お願い!」
「真名、偽装登録。いけます!」
フラウロスと私の前に壁が現れ、全てを灼かんとする光とぶつかる。
ギチギチと音を立てて光は霧散した。
間に合った…!
しかしサーヴァントたちは疲労の色が濃い。
先程神祖ロムルスと戦ったばかりだ。
特に前線で張り合っているアーサーは、1番消耗が激しそうだ。
どうする?
このままではジリ貧で負けてしまう。
フラウロスは続けて魔力波を放出している。
徐々に押される戦線に、思考力も削がれていく。
考えろ、考えろ!考えろ!!
その時、フラウロスの無数の眼が、こちらを向いた。
「あ―」
ひとつ、またひとつとこちらに視線を向けてくる。
その視線は体の芯を凍らせ、声すら喉から震わせられなくなってしまった。
赤い瞳の眼光が鋭く光る。
「マスター!?」
マシュが慌ててこちらにやってくるが、間に合わな――
突如、フラウロスの側で光の柱が沸き立った。
それはフラウロスの放つ禍々しい光ではない。
全てを浄化せんとする、星の輝き。
見ると、アーサーの持つ剣が輝いていた。
何故だか当の本人すら驚いているような様子であったが、すぐに切り替えてフラウロスに向き合った。
「是は、世界を救う戦いである」
輝きを増す剣。
え?もしかして、もしかしなくとも、宝具!?
はじめて見るアーサーの宝具。
今それが放たれようとしている。
鋒を下げて紡ぐその真名は―
「エクス」
「カリバァァァーーーーー!!!」
振り上げられた聖剣から溢れ出た光は、フラウロスにまっすぐ向かっていく。
瞬く間に醜い肉塊は星の光に呑まれた。
《━━━━━━!!!》
それは、甲高い叫び声を上げて見えなくなった。
聖剣の光が収まり、あの巨体が消えたことをマシュが確認する。
「……敵性生物、撃破です!マスター!」
「よし!」
巨体がいた場所には、レフが身体を震わせて立っていた。
「馬鹿な…」
「…!!ななし!」
声を上げたアーサーに驚いて見てみると、レフの足元にななしさんが横たわっていた。
殆どうつ伏せになっており顔は見えないが、僅かに肩が上下していることから息はあると分かる。
良かった…!
生きてた!
「たかが英霊ごときに……。我らの御柱が退けられるというのか?」
足元のななしさんには目もくれず、レフは何かをぶつぶつと呟いている。
あの調子だと、これで終わりではないようだ。
「まだ、何か……」
マシュが言いかけるが、そこにドクターの声が割り込んできた。
「気を付けて!聖杯の活性化を感知した!また何かが起きるぞ!」
その声を聞いてマシュも油断なく盾を構え直した。
「…古代ローマそのものを生贄として、私は、最強の大英雄の召喚に成功している」
くくく、と喉を鳴らして笑うと、玉座に振り返って両手を広げた。
「来たれ!破壊の大英雄アルテラよ!!!!!!」
すると召喚サークルが浮き上がり、激しく光り出す。
中から現れたのは褐色の肌に白い衣装を纏った人…?
それを見てレフは満足そうに笑う。
「終わったぞロマニ・アーキマン!人理継続など夢のまた夢!
このサーヴァントこそ究極の蹂躙者!アルテラは英霊ではあるが、その力は―」
突然、自慢げに語っていたレフの声が止まった。
「え?」
「―黙れ」
その一言ともに剣を振り、アルテラはレフを真っ二つに引き裂いた。
そのまま死体はグシャと音を立てて床に落ち、アルテラの足元に血溜まりを作った。
その死体に見向きもせず、アルテラはななしさんの体を持ち上げて肩に担いだ。
「なんだ!?聖杯の力がアルテラというサーヴァントに流れているぞ!?」
「聖杯…?」
混乱したようなロマニの声に、聖杯の存在を思い出した。
そういえば聖杯はどこにいったのだろう。
「え…?どこってすぐそこだ!アルテラの側に反応があるぞ!?」
「すぐ、側って…もしかして」
マシュが何かを言いかけた時、アルテラが口を開いた。
「私は―」
「フンヌの戦士である」
「そして大王である」
この西方世界を滅ぼす、破壊の大王。
そう機械的に告げたアルテラの持つ剣が、3色に輝き始める。
「破壊の――」
「魔力反応増大!
これは宝具の―それも、対城宝具クラスの解放だ!」
ロマニが警鐘を鳴らす。
「マスター…!」
「宝具使用だ!急げ!!」
「はい…!」
おまえたちは言う。
私は、神の神罰なのだと。
―神の鞭、なのだと。
七色の光が渦巻き、爆発した。