こんにちは,サンドリヨンW

誰かの声が聞こえた気がした。

破壊ばかりの存在を
愛するものなど何もない自分を

嘆き苦しむような。


そう、あなたの名前は―


「アル、テラ」


魔力が引っ張られている。

その先には、何故か回路が繋がってしまっているサーヴァント、アルテラ。

剣が唸る音がする。

「魔力反応増大!またあれがくるぞ…!」

ドクターの声がする。

「マシュ!ブーディカ!もう一度いける!?」

立香の声がする。

「…ッ大丈夫です、マスター!いけます!!」

マシュ。

「あともうひと踏ん張りだよ!」

ブーディカ。

「頼んだぞ」

荊軻。

「ななし…!」

思わず息を飲んだ。

セイバー…

セイバー…!

ジリジリと焼ける音がする。

止まれ…

私とアルテラを繋ぐ回路よ

止まれ、止まれ…!!


―バチンッ

何かが途切れる。
雷に撃たれた電線が焼けるような。

次いで、激痛。

「グッ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

我慢する間もなく、喉から獣のような叫び声が張り裂け出る。

「おまえ…なにを…」

アルテラが驚いたように動きを止めたのが分かった。
剣の唸りも鎮まる。

「そんな無茶な…!!
―ッだけど好機だ!立香ちゃん!」

突然の出来事に呆気に取られていた立香も、ドクターの掛け声で正気に返る。

「ネロ…!」

「うむ、心得ているぞ!」

真紅の豪華な布がはためく。

動きを止めたアルテラに向かって、一閃。


「そう、か…」

アルテラが後ろに仰け反りながら、ポツリと零した。

「世界には……。私の剣でも、破壊されないものが……在る、か」

「それは……」


―少し、嬉しいな…。


痛みに地面で悶える私には、アルテラの表情は見えなかった。

だが、ほんの少し、ほんの少しだけ、その声色が柔らかかった気がした。



「ななし!マスター、ななし…!!」

痛みのあまり倒れ伏したななしさんに、アーサーが慌てて駆け寄り、抱き起こした。

「ドクター!ななしさんは…」

「あぁ、うん。大丈夫…とは言えないけど、すぐに命に別状を来す状態ではない。回路に異常が起きてるみたいだ!
とにかく、すぐにレイシフトを敢行する」

すぐに支度を!
慌ただしく告げるロマニの声に頷き、ネロに向き合った。

たぶん、支度とは、別れの挨拶をしろということだろう。

ネロは消えかけている私たちに驚いてはいたが、何故かそれもどこかで分かっていたと話す。その上で、

「別れは言わぬぞ。礼だけを言おう」

―ありがとう。
そなたたちの働きに、全霊の感謝と薔薇を捧げる、とな!

レイシフトする寸前に見せたネロの華やかな表情を見て、私は今回の旅路に確かな満足を得たのだった。



レイシフトから帰ってきたら、もうそれはバタバタだった。

ロマニから「おかえり」という言葉、そして速攻ななしさんを医務室へアーサーに運んでもらうよう指示していた。

アーサーもその言葉に頷くだけ頷いて、ななしさんを抱えて駆けていった。

そのスピードに取り残されたマシュと私にダヴィンチちゃんがいつも通りの笑顔を浮かべて、長い旅路を労ってくれた。

「悪いね。こちらでも数値上で観測していたんだが、どうにもややこしい事になってるみたいでさ」

「ややこしい、とは?」

マシュの問いかけに、ダヴィンチちゃんはなんと言ったらいいものか…と暫く唸る。

「君たち、聖杯はどこにあると思う?」

「聖杯?」

そう言えば、セプテムの聖杯はどこへ。

アルテラの側に聖杯が…と話を聞いて以来、見かけない。

「あ…もしや」

マシュがふと声を上げた。

「……聖杯は、ななしさんの中に…?」

「え…!?どういうこと!?」

「そう!その通りだよマシュ。彼女の魔術回路の中に、どういう訳か聖杯が取り込まれちゃったみたいでね。通りで計器がおかしいはずさ」

それに加えて魔術回路壊しちゃうしさ、とさらりと言うダヴィンチ。

魔術についてはまだまだ知識が足りない私にとっては、何がどうなっているのかさっぱりだ。

ただ、世界を動かす程の聖杯の力をその身で体感している。只事ではないことはよく分かった。

「そ、それで、ななしさんは…」

「あぁ、心配はないさ。ロマニも言っていたように、すぐにどうこうなるものでもない。後は私たちに任せたまえ」

君たちも休養が必要だ、
部屋に行って休んできたまえ!
と言ってダヴィンチちゃんは私たちの背中を押した。


廊下に追い出されたマシュと私。
思わず顔を見合わせた。

「…とりあえず、ここはロマンたちを信じて、私たちは休ませてもらおっか?」

「そうですね、先輩。あの―」



この後、
マシュの強烈なマッサージを受けて、旅の疲れを癒した?藤丸立香なのであった―

「マシュ、死ぬ」

「先輩!?こ、今度こそは…!あ、待ってください、逃げないでください〜!!」
2018 10 14
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