君の声で聞きたい


大我くんはわたしのことを好きだと滅多に言ってくれない。

わたしが『好き』と言っても、「ふーん」とか「知ってる」とか白けた顔。知ってるなら、あなたも言ってくれよ、と喉まで出かかる。大我くんが一生無反応なのって、もしかして慣れてるから?それとも、わたしに興味が薄れた?マイナスな方向に思考が傾いている。好きと言ってもらえないショックから、IQが普段より低下しているのは見逃してほしい。

とにかく、今日こそ、絶対言わせたい。

そう意気込んで、向かった大我くんの家。

「どうぞ」
『お邪魔します!』

わたしだけ盛り上がってるから、高低差が凄い。大我くんは訝しげに首を傾げた。長い前髪から覗く片目の破壊力は言葉で表せるものじゃない。

「なにじっと見てんの。そんなに俺の顔好き?」
『え、まあ好きだけど。前髪長くなったなあって思って』
「ふーん、じゃあ切ろうかな」

スッと髪に手を挟み、かきあげた。それ、効くって分かっててやってますよね。長いのも短いのも似合う。もういっそ変な髪形にしてくれ。てかサラッとしすぎてて気づかなかったけど、またわたしだけ好きって言ってたよね。なんだよ、もう。

「さっきから百面相しすぎじゃない?言いたいことでもあんの?」

わたしの気も知らずに。でも、好きって言われないだけで拗ねる人間だと思われたくない。

『別になんでもない』
「言って」
『やだ』
「言えよ」
『やだ』
「俺に言えないことなんだ」

大我くんは納得いかない顔をしながら、詰め寄ってくる。さすがにもうキツイ。塩対応するなら徹底的に塩対応してほしい。なんでこんなことで譲らないの。

『…言ってくれない、から』
「なにを」
『好きって!言ってくれない!わたしが言っても空返事ばっかだよね』

初めて大我くんの前で声を荒げた。そのせいか大我くんは目を見開いて固まっている。いい気味だ、もうこの際もっと困ってしまえ。

『毎日言ってほしいとかじゃないんだけど、一回くらいは聞きたいよ』
「名前さ、もしかして覚えてない?」

ちゃんと好きって言ってるけど、とピシャリ。聞いてない!知らない!嘘つけ!

『いつ?』
「夜。ベッドの上。この前もたくさん言った」

淡々と説明する大我くん。即座に声にならない悲鳴が出る。恥ずかしくなってじわりと涙も出てきた。違うんだ、わたしの予想とは。

『そ、そういうのじゃなくて!違う!』
「同じようなもんじゃん、不安ならしてみる?」
『なんでもかんでも、そっちに持ってかないで!』

パチン、と大我くんの手を弾く。こんなの、違う。
ただ、普通に好きって言ってもらいたいだけなのに。

『これじゃ、まるで体だけみたい…』

ピシっと空気が凍り付く。だかしかし、もう出たものは取り返しがつかない。分かっているはずなのにおバカな口は止まらない。

『わたしに、興味なくなったんだったら、飽きたんなら、ちゃんとそう言ってよ』

空気が最悪だ。言いたいことをひっきりなしにぶちまけたわたしの頭は急降下。わたしのことを見下ろす大我くんにゾッとする。怖いというより、おぞましい。

「ほんとに?俺の目見てそう言えんの」

グッと腰を引かれ、目と鼻の先。口から出たのは虫の音みたいな謝罪だった。

「……いや、違う、ごめん。俺も、好きだよ」

でも、次、体だけとかくだらないこと言ったら許さないってしっかりめに怒られた。

***

『え、さっき好きって言った!?』「反応おっそ。もう言わないでおくか」『えぇええ』「てか名前からも言ってよ」『心の準備ってもんが…』「いっつも言ってんだろ」『好きです』「んは、俺も好きだよ」『…わたし今日が命日になる?』「何言ってんだよ」


@ni_ko_9 icca. - お願い事1


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