眠るきみに秘密の愛を

麗日でも来てくれれば助かったものの来たのは緑谷と飯田と轟。
手伝うか聞かれたが他のやつに触らせたくないので断っておいた。

『上鳴ぃ…』

首に腕が巻きついたままなのでそのまま横抱きにしてエレベーターに乗った。
機械音だけが響く個室に涼風の甘ったるいくらいの声が響く。

マジでやめてくれよ。

「起きたか?」
『ふふ…変な顔』

あぁ、夢を見てるだけか。
変な顔って…でもどんな夢にしろ涼風の夢に出てきたことが嬉しくて仕方ない。

涼風の部屋まで辿り着き足を止める。

「これって…入ってもいいのか?」

仕方なく、とはいえ女子の部屋に無断で入るのは気が引ける。

「涼風ー、部屋入るよ?」
『んー…いいよー』

たぶん無意識の返事だと思うが許可は得たのでドアを開ける。
寮生活になって初めて見た時とは違う模様替えされた部屋。
これを知っている男子は俺だけだ、と思うとそれだけでテンションが上がった。

涼風をベッドに下ろすとベッドの枕元に飾ってある写真立てが目に入る。

涼風と、俺と切島と瀬呂と爆豪、芦戸と耳郎が写っている。
その横には切島と俺と涼風で撮った写真。
さらにその横には爆豪と耳郎と俺。
飾られている写真全てに俺が入っていて、先程よりも更にテンションが上がる。
正直今なら爆豪に何されてもメンタル弱らなそう。

『んー、ねむいー』

その言葉にハッとなる。
ここは涼風の部屋。
寝ている女子の部屋にいる俺。
流石にやばいと部屋を出ようとするが、布団をかけ忘れていたことに気が付きベッドまで戻る。

彼女に布団をかけて今度こそよし、と踵を返したところで腕を掴まれる。

『置いてかないで、』
「へ?」
『どこも行かないで』

目が開いていないのできっと寝言だろう。
普段なら耐えられたであろう彼女の力も今は気が動転していて少しも耐えられずそのまま彼女の上に倒れ込む。

いや、これは本当にまずいって。

「陽向ちゃーん?寝ぼけてると襲っちゃうよー…?」

そう静かに声をかければ彼女はふわりと笑う。
これは完全に涼風が悪い。

俺の下で寝息を立てる涼風にムカついてそのままキスをする。
2.3度したが彼女は起きる気配がない。

「はぁ、本当に人の気も知らねぇで…」

彼女の上から退き、ベッドの横にしゃがみ込む。

『上鳴ぃ…』
「はいはい」
『…す、き』
「っーーー」

また寝言で呼ばれ振り向くと彼女はまた笑ってそう言った。
確かにそう言った。
寝言だからどこか抜粋しているのかもしれないがそんなこと考えられるほど今の俺に余裕は無い。

「俺も、好きだよ」




眠り姫にもう一度キスを



(あーくっそ…寝れるわけねぇだろこんなの)