交差する気持ち


あの後、もちろんキレられるだろうと思ったが爆豪は何かを考え込んでて口も聞いてくれなかった。
いつもの事だけど、死ねすら言ってくれなかった。

ふう、とため息をついて机につっ伏す。
どのくらい経っただろうか。
そのまま寝ていたようで教室には夕日がさしていた。

いや誰も起こしてくんないのかーい!
誰もいない教室に遠くのクラスの人の声が静かに響く。

あーあ、爆豪と喋りたかったな、と思いながら爆豪の机を見る。
いや、いいよね?別になんか変なことするわけじゃないし…
ちょっとした出来心で爆豪の席に座る。

こんな風景かぁ、なんてそこからの景色を堪能する。

『あー好きだなー』

何でこんなに好きなんだろ。
轟のこと好きになれれば、きっと幸せなんだろうな。
あんなに想ってくれて…でもなんで私なんだろう。

はぁ、とため息をついて机に突っ伏すと誰かが教室のドアを開ける。

やましい事しかない私は思わず立ち上がる。
ガタン、と静かな教室に椅子が倒れる音だけが響く。

「何やってンだテメェ」
『ば、くごう…』
「テメェの席はあっちだろ」

そう言って私に近づき自分の机から教科書を取り出す。

『あの、これはつい出来心っていうか…』

焦って言い訳するが爆豪は心底興味がなさそう。
と言うかめちゃくちゃイライラしてません?

「半分野郎がテメェのこと待ってンぞ」

校門にずっといる、と言って出ていこうとするので腕を掴んで引き止める。

『ばくごっ、好き』

何故かいつも以上に緊張して声が上擦る。
振り向いた爆豪は相変わらず仏頂面で感情がよく分からない。

『ごめっ、』

引き止めたことに対して謝って手を離そうとするとそのまま腕を引かれ体勢を崩す。

時が止まった気がした。

自分が爆豪の腕の中にいることに気づいたのは爆豪が口を開いてから。

「…意味わかんねェ」
『は、え、』
「半分野郎で良いだろうが」

抱きしめられたかと思ったら体を離されてそれだけ言って教室を出ていく。

意味わかんねぇって?
いや私の方が意味わかんねぇっすけど。
なに、抱きしめといて轟で良いだろって?
え、本当に意味不明なんですけど。

今までよりも速い心臓の動きに、もう死んじゃうんじゃない?とふざけたことを思っても元には戻らなくて。
それと同時に轟で良いだろって言葉が頭の中に木霊する。
自然と目からは涙が溢れていて、あぁもう無理かもなんて。







君にはきっとこの想いが届かない。



(分かりきってたのにね。)
(どこかで期待してたんだよ)
(いつか私を見てくれるって)

(何で涼風を抱きしめたくなったか)
(なんで抱きしめたのか)
(いくら考えても分かんねぇ)