EGOIST
「涼風!」
いなくなった他校の生徒達にイライラする爆豪。それを落ち着かせている切島。
そんな二人を眺めていると息を切らした轟が走ってくる。
『とどろっ、わ』
「他校のヤツらが雄英がっていってたから心配した」
走ってきた勢いのまま私に抱きついてくる轟。
と同時に爆豪の舌打ちが聞こえる。
「あれ?切島と爆豪なにやってんの?」
「わー轟くんまた大胆なことしとる」
三奈ちゃんとお茶子ちゃんの声が聞こえたので何人かで来たのか、と理解したものの、全然離れる気配のない轟を押しかえす。
まぁビクともしない。
『轟ー?轟さーん?』
「本当に良かった」
ふぅ、とため息をついて離れた轟。
いつもはあまり顔に出さないけど心配してくれたんだな、とわかる。
「テメェがちゃんと見とけやクソが」
「え、ちょ、爆豪?!」
私の背中を押して轟に押し付け切島と去っていく爆豪。
『爆豪、』
私の呟きは爆豪に届くことはなくて、虚しく消えていった。
「涼風、行こう」
そう言って私の手を握る轟。
三奈ちゃんとお茶子ちゃん。ニヤニヤしてるの、見えてるからな。
その後のボーリングは正直楽しいけど楽しめていなかった。
それを顔に出すとまた轟に心配をかけてしまうので笑顔を貼り付ける。
散々遊んでそれぞれ帰路に着く。
帰り道が同じメンバーでそれぞれ別れる。
まぁこんな時だってあなたは私のところに来るんですね。
私の手を握ったまま離さない轟。
『私、轟のことちゃんと考えるから』
「本当か?」
『うん。』
私がそう言うと彼はとても嬉しそうな顔をした。
まただ、彼はふわりと優しく笑う。
そんなのズルいじゃん。
私のこと大好きじゃん。
そんなの伝わらないわけないじゃん。
心がズキ、と傷んだのに気づき彼から目をそらす。
「陽向」
『え、』
「俺もそう呼びたい」
『い、いいよ』
「ありがとう。」
突然名前を呼ばれて動揺する。
それでもやっぱり彼は嬉しそうで、こんな気持ちのままじゃダメだな、と自分の中で決意する。
『私も、焦凍って呼ぶね』
「!あぁ。嬉しい」
ちょっとでも彼の気持ちに寄り添えたら、なんてある意味エゴなのかも。
彼の姿に自分を重ねて
(今度また遊びに行こう)
(うん!今度は砂藤たちも来れるといいね)
(違う。二人で)
(二人?)
(嫌か?)
(ううん。出かけよっか。)