南京錠もかけなきゃね。


次の日、登校しようとしたら家の前に轟がいた。
いや君近所じゃないよね。
そう言うと迷惑か?としょげてしまったので首を横に振る。

『今日古典の小テストあるね』
「あぁ」
『古典得意?』
「普通だ」
『普通か』

なんて事ない普通の会話。
しばらく歩いたところで轟の足が止まる。

「陽向」
『ん?』
「今日も可愛いな」

名前を呼ばれて振り向くと、彼はまた私に爆弾を落とす。
学校一のイケメンに言われて照れない女子がいるだろうか。
思わず目をそらせば私の頭に手を置いて先に歩き始める轟。

轟は多分もっと歩くの早い。
でも私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
本当にどこまで優しい人なんだ。

教室に着くとまだチラホラとしかいないクラスメイトに胸を撫で下ろす。

「邪魔だ。退けや」

その声に心臓がはねる。

『あ、ごめ』

私が謝って避けると爆豪はこちらを見もせず通り過ぎる。
ガン無視。
はい、ガン無視。
うん、前から思ってたけど結構酷いよね。
轟の優しさを感じるようになってから特に酷いと思うようになったかもしれない。

私が席に着くと轟も席にカバンを置いて私の元へと戻ってくる。
いや犬かい。

始業時間が近づいて続々と集まるクラスメイトたち。

轟はと言えばひたすら私のところに来るが特に話すことがないのか無言なので私から話題を振っていた。

お昼休みになったタイミングで響香ちゃんと三奈ちゃんが私のところにくる。

「爆豪のことどうしたの?」
「なんか今日全然喋ってないじゃん」
『あー…うん。なんかもう諦めよっかなって。』
「「えぇっ?!」」

私がそう言うと二人共揃えて驚きの声をあげる。
と、皆の視線を集める。

「陽向」
「「え?!!」」

みんなの視線を集めた上で轟が私の名前を呼び、今度は皆が声を上げる。

「待ってどういうこと?」
「二人くっついたん?」
「そういうことは早く言ってよ!」

響香ちゃん、お茶子ちゃん、三奈ちゃんがうりうりって肘でついてくる。

『あ、いやそうじゃなくて…』
「まだだ。」
「「まだ?!」」

いや、語弊があるのよ轟さん。
語弊じゃないけども…いやそれじゃあまるで私が完全に爆豪のこと…
いや、諦めるって決めたんだし間違いではないか。
その彼を見ても結局興味無さそうに教室から出ていくだけだし。

「あぁ。まだ答えはもらってない。だけど俺は陽向が好きだから待つ。」

轟の真っ直ぐな思いが少し辛い。
何でこんなに心が痛いんだろう。
嬉しいはずなのに。

轟が私の元へ来たのはお昼を誘うためだったらしく詳しく聞かせろと三奈ちゃんや響香ちゃん達とも一緒に行くことになった。

遠くの方で平然とご飯を食べる爆豪の姿を見て、その日のお昼ご飯は喉を通らなかった。

それが何なのか、自分でも気づかないように暗示をかけて。







この気持ちに蓋をした



(きっともう大丈夫、)
(そう自分に言い聞かせるのが精一杯。)