君のもとへ


「大丈夫か?」
『うん。ありがとう。』

あの後みんなとは解散をした。
私と轟はデートを続行して、映画を見てゲーセンに行って。
もうこれが最後。
最初で最後のデート。

『公園、寄ってかない?』

私がそう言うと轟は頷く。
いつだって私が言うこと全部に首を縦に振る。
優しいな、なんてそんな私が勝手に思ってただけ。
好きな人に言われれば頷いちゃうの、自分だってわかってるじゃん。

誰もいない夜の公園。
私がベンチに座ると轟も隣に座る。

『今日、楽しかったね』
「あぁ。蕎麦も美味かった。」
『良かった。あの後おかわりしたんでしょ?』
「あぁ。…あの時、泣いてた。」

上鳴があんだけ声上げたらそりゃ分かるよなぁ。
でも来なかったのは彼なりの優しさだとわかってた。

「俺じゃダメだったか。」
『ごめん、焦凍のことが嫌いとか好きになれないとかじゃなくて…爆豪のこと頭から離れない』
「あぁ、知ってた。俺はそれでもいいと思った。いつか忘れるだろうと思った。」
『私もそう思ってた。』

二人して馬鹿だな、と笑う轟。
いつもの優しい笑顔を向けてくれることに安心する。

「俺は多分、忘れられない。」
『ごめん…』
「それでもいい。陽向に感じた気持ちは大事なものだから。」
『焦凍…』
「だから、そんな顔するな。」

ポンっと頭に手が乗る。
梅雨ちゃんと話してもう出ないってくらい泣いたのに、まだ涙が溢れてくる。

「陽向」
『っなに、?』

名前を呼ばれてそちらを向けば額に轟の唇が当たる。

『へ、』
「本当は口にしたかった。」

そう笑って轟の指が私の唇に触れる。

「でも爆豪に悪ぃから」

ふっと笑って指を離す焦凍。

「ちゃんと、自分に正直になれよ。」
『っ…うん!』

轟は私を家まで送ると言ったが断った。

公園に一人になって緑谷に電話をかける。

『あーもしもし緑谷?』
《涼風さん?!どうしたの?》
『爆豪の家教えて』

すぐにでも貴方に会いたいから。







会って貴方に伝えたいから。



(かっちゃんの住所?)
(うん。はよ。)
(口頭だとあれだからメッセージに送るね)
(ありがと)
(涼風さん頑張ってね)
(っ…バカ緑谷!)
(え、ええ?)
(緑谷に泣かされたって爆豪に言っとく)
(えぇ…)
(嘘だよ本当にありがと)