03

車の窓から見える景色が、都会的なものからどんどん殺風景なものに変わるのを眺めること約六時間。
開けていた窓も寒くなって途中のサービスエリアで閉めた。
最後のサービスエリアから一時間半ほど経過した頃、ようやくバックの音に切り替わった。

少しだけ赤く染まった空を眺めながら車から降りて伸びをする。

肺に入ってきた新鮮な空気はひんやりと冷たくて、あぁ北に来たななんて頭の中でダジャレを言って一人で笑った。

「何気持ち悪い顔してんの。早く荷物入れちゃいなさい。」

助手席から降りてきた母親に促されるままトランクからキャリーケースを下ろす。

『いや、北に来たなってさ』
「…お父さん今日の夕飯はお蕎麦でいい?」
『無視かよ』

私の渾身のダジャレも無視してトランクに積んであった荷物をぽんぽんと運ぶ父親に声をかける。

「くだらないこと言ってないで早く部屋に荷物運んじゃいなさい。」

催促をされながら荷物を運んでいると祖母が顔を出す。

「あらあら、よく来たね。早くお入り。」

そう言って私の荷物を持とうとするので全力で断って玄関から荷物を運び入れた。

大体の荷物を運び終えると少しのんびりしな、と私の部屋になる部屋へと案内され有難く布団に座った。

【おばあちゃんち着いた?】

見ていたのかと思うくらいのタイミング。
GPSでも付けられてんのかななんてありもしないものを探してしまった。

研磨からのメッセージに、着いたよとだけ返すとすぐに返信が来る。

【片付け落ち着いたら後でゲームやろ】

それだけのメッセージに頬が緩んで、またすぐにうんと返信をした。

もう一週間もすれば入学式で高校へと上がる。
知らない訳では無いが、住んだことのない場所で始まる新生活。
友達が出来るか、いじめられないかなんて不安が次から次へと頭を過る。

はぁ、なんてため息をついていると下から大声で呼ぶ母親の声が聞こえてきて、はいはいと言って部屋の電気を消した。