拾参

こんにちは。現在私は大江戸スーパーにてケチャップを選んでいます。料理をしている最中に足りないことが分かり、渋々買いに来た次第です。



前はコンビニで売っていた小分けのやつを使っていた。しかしそれはもう、割高。うーん、やっぱり大きいのにしよう。あ、この商品ラストだ。危ない危ない。マヨネーズ大人買いする人はいるけど、ケチャップはいたかな……いたな。会う機会はないと思うけど。
片手に商品を抱え、レジに向かおうと向きを返る。すると死角から人が現れて、ぶつかりそうになった。一歩下がって顔をあげる。

「、すみません。」
「あ、いえ。こちらこそすみません。」

軽く頭を下げてレジに行こうとするが、「あっ!!」という声に思わず振り返る。見たことある気がする。水色の着物に白の袴。黒髪にメガネ。…メガネ?

あぁ、新八くんか。

気付かなかったな。山崎さんのときといい、普通すぎてオーラがない。でも、さっきは律儀に謝り返してくれて好青年だと思いました。ただ何だろう、凄く見られてる。
?…もしかしてケチャップ?ケチャップ探してる?ラストだよコレ。…いやでも私はコレ買いにきたんだしな。

「あ!す、すみません!!」
「いえ…」
「あの、この前知り合いの人と貴女をお団子屋さんで見掛けて…」
どの人?銀髪?
「あまりに見事なあしらい方をしていたので覚えていたんです。」
桂か、桂なのか。
「…はぁ。まぁ色々なお客様がいらっしゃいますからね。」

それじゃあ。と言って頭を下げてからレジへ。お金を払い、テープを貼って貰って店を出た。
いや、出ようとした。したが目の前に白い物体。何コレ、なんか毛がフサフサしてる。生き物だ。下を見ると尻尾。たまにパタンと動かす。尻尾を跨いで脇を通るということは脚の開きにくい着物では無理そうだった。

「定春〜?新八待ってるアルか?新八は今行ったばかりネ。」

あ…。

「散歩行くヨ〜。」

グイグイと首輪を引っ張る。痛そう。めっちゃ痛そう。定春は足でめっちゃ踏ん張っている。嫌がってるよ止めたげて!
ズルズルと引きずる彼女に声をかけるか本気で迷う。何しろ私は犬好き。でかいけど定春は可愛いのだ。艶々とした毛並み。真っ白な毛色、くりくりとした目、ふさふさな尻尾。可愛い。
ふと力を抜いた少女と目が合う。首を傾げてる。可愛い。

「…」
「お…大きなワンちゃんだね。」
沈黙が辛くて思わず口を開いてしまった。
「ワンちゃんじゃないアル。定春ネ。」
「…定春くんかぁ、可愛いね。」
「当たり前ネ!定春は江戸一番ヨ!!」
「……うん。あ!大変、急いで帰らなきゃ。」
「バイバイヨ〜。」

バイバイと手を降り返して家路に着く。定春も神楽ちゃんも可愛いかったな。久しぶりにテンション上がっちゃったよ。