拾肆

こんにちは。今日はお休みなユキです。この間頼んでおいた香水が漸く出来たようです。さっそく取りに行って来ました。今はその帰りです。






「あ。」

ところで、仕事の時私は基本ナチュラルメイクだ。そして、休日になるとしっかりしたメイクをする。普通は逆な気もするが、色々な道具、色合い、雰囲気を試した結果落ち着いたのが今のメイクだったのだ。なので休みになると普段とは違う自分を楽しむ。アレ、夏休みや中学・高校でデビューしちゃうカンジだ。私は大分デビューしてしまうらしく、友人と待ち合わせたとき、探すのが大変だと怒られたことがある。
というわけで今の私に知り合いは居ない。…ハズだ。その筈なのだが、何故か前から歩いて来た少年と目が合い、そのままの状態で彼は足を止め、固まっている。私はといえば、小物屋を冷やかしている最中だった為物凄くゆっくりと歩いていた。今更歩みを早くするのもおかしいので、首を軽く傾げてから視線を外し、そのまま次の店へと歩みを進めた。

「あの、お久しぶりです。今日は店行こうと思ってたんでさァ。」
話しかけてきた!え?
「、あの、俺のこと覚えてますかィ?」
いや、君こそ誰だか分かってんの?
「…誰かと間違えてませんか?」
「え。団子屋のお姉さんでしょう?」
え。わかんの?なんで?
「……顔違うのによく分かりましたね。」
「!あ、あれですぜィ。香水!」
あぁ。確かにいつも同じの使ってるしな。でもなんか、そういうのチェックされてるんだなぁと思ったら萎えた。
「はあ。」
「そ、れで、あの…」
誰だコレ。なんかもじもじウジウジしてる。
「お!沖田総悟っていいやす、俺の名前…」
「はあ。」
「お姉さんの名前も教えて貰えやせんか…?」
なんでこの子こんな子犬みたいな目してんの?ドSは?ハニーフェイスで可愛いよ。
「…吉田ユキです。」
「ユキさん…」
なんでそんなしみじみしてんの?
「!す、すいやせん!つい、名前で呼んじまって…」
「…別に構いませんけど…。」
「!!ほ、ほんとですかィ?ありがとうございやす!」
なにこのワンコ!可愛い。可愛いが…、ドSな彼を知っているから素直に喜べない。だって喜ばしといてズドーンと落とすのが楽しいんでしょ?
「あ、そ、それじゃあ今日はコレで…」
「はあ。」
「さ、さようなら!また店行かせて貰いやす。」
「はあ、どうも。」
タタタと5、6歩駆けてからくるっとこちらを振り向き、おずおずと頭を下げてから全速力で走って行った。可愛かった。最後まで可愛かった。あれじゃあ攻めじゃなくて受…ゲフンゲフン。

疲れてるな帰ろう。