拾陸

こんにちは、ユキです。水仕事が多いので手荒れが気になる今日この頃。ついに奴が来ました。




「オネーチャン、この団子包んでくれんかのう。」
「はーい。」

まさちゃんが丁度他のお客さんの注文を取っていたので、食器を洗う手を止めてカウンターに向かう。

「コレとコレ、五本ずつ。」
「はい。」

大きなパックに一本ずつ詰めていく。二つのパックに詰め終え、ビニール袋に入れて手渡す。

「ではお会計1200円です。」
「…」
「…」

顔を上げて驚いた。だって、目の前には背の高いモジャ。洋服に丸いサングラス、下駄の坂本辰馬。

「…どうかなさいましたか?」
「いや、なんか嗅ぎ慣れない香りがしたんじゃが。」
「…」
「オネーチャンだったんじゃな。」

少し顔を近付けてくる。?なんか匂う?さっきまで食器洗ってたから手は洗剤の匂い。火は………!!

「す、すいません!少々お待ち頂けますか!?」

返事を聞かず厨房に駆け込む。鍋に火をかけっぱなしなのを忘れてた。…良かった、セーフ。あーびっくりした。
カウンターに戻るとまさちゃんが坂本さんの耳を引っ張っていた。他にお客さんもいるし、銀さんじゃないんだから。と少し慌てる。

「アッハッハッハ、助けてー。」
「まさちゃんっ」
「…はぁい。」

むぅ、と口を尖らせる。可愛い。既に代金はいただいたらしい。まさちゃんはなんだかんだ言って仕事は早いし、キチンとしているので常連さんも大体のコトは流してくれる。というか、流石銀魂の世界。

「火は大丈夫でしたかぁ?」
「あ、うん。ごめんね?」
「いえ、むしろ好都合でしたのでぇ。」

なにが?

「すいませーん、醤油団子一つ。」
「あ、はーい。」

すぐに厨房に引っ込んだ私はこのあとの二人の会話を知らない。


「ほぉら見ろ。てめぇの勘違いだろぉが。」
「そーかのう?」
「自惚れんなよこのモジャがぁ。」
「いや、アレは赤くなった顔を隠すための演技じゃ。」
「むしろ青かったからぁ。」
「香水かのう。ええ匂いじゃった。」
「さっさと帰れェェェェ!!」