拾捌

こんにちは、ユキです。今日も一日が始まりました。平日はいうほどお客さんは来ません。…普段なら。






「おねーさん、団子おかわりー」

ただいま厨房は戦争です。大将と二人掛かりで団子を焼きながら蒸した餅を成形する、の繰り返しである。十分に用意されていた団子や大福はもうすぐ底をつく。まさかこんな人が来るなんて予想外だった。まさちゃんは今日は来ないし、女将さんも買い出しに出てしまっている。…神威さァァん。

「はい、お待たせしました。」
「うーん、ここの団子おいしーネ。」

もぐもぐもぐもぐ。
口一杯に頬張りながらクリンクリンの目で見上げてくる。可愛い。

「ありがとうございます。」
「あ、次は大福で。」
「はい。」

まだ食うのか。いやでも大将は大変そうだけど、いい笑顔で「こりゃいい金ヅルだ」と言っていたからいいのかな。
大将に注文を伝えて、お茶のおかわりと大福を盆に乗せる。因みに他のお客さんは彼の食いッぷりを見て、口を押さえて帰ってしまったのでいない。営業妨害だ。いやでも他のお客さんの何倍も頼んでくれてるしな。

「おーい団長、やーっと見つけたぜ。」
「あれ?阿伏兎じゃん。何してんの?」
「何って…。おいおい、さっきも食ってたじゃねーか。」
「そーだっけ?」

はぁーっと頭を抱える阿伏兎さん。気持ちは分かります。お茶と大福を持って近付く。

「お待たせしました。」
「むぐ。ありがと。」
「おい嬢ちゃん、会計頼むわ。」
「あ、じゃあ、あるやつ20個ずつくらい包んで。」
「まだ食うのかよ…。」
「気に入ったんだよねー。」
「そりゃまた珍しい。」

注文頂きましたー。大将に手伝って貰って、団子をパックに詰める。会計のためにレジに打ち込んでいく。レシート滅茶苦茶長い。阿伏兎さんに値段を言って払ってもらう。なんかブツブツ言ってるよ。そりゃそうだよね、団子屋で払う金額じゃない。

「ありがとうございました。」

大量の団子たちを詰め込んだ紙袋を阿伏兎さんに手渡す。神威さんはまだもぐもぐしてる。

「ごくん。ご馳走さま、また来るよ。」
「はーっ、世話んなったな。」


阿伏兎さんの背中が疲れて見える。頑張れ阿伏兎さん。