弐拾

こんばんは、ユキです。女の人って一人で入りにくいお店とかあるみたいです。牛丼屋とか映画館とか。私はどこでも平気ですけどね。




久しぶりにピザが食べたくなって、注文することにした。たまに食べたくなるんだよね、あの分厚い生地に子供が好きそうな具ののったピザ。一人では多いけれど、冷凍でもすればいいかな、ということでSサイズを頼むことにした。

「ピザ屋でーす。ピザお届けに来ましたー。」
「はーい。」

財布を持って扉を開ける。顔を見て思わず二度見。

「1200円になりますー。」
「、はい。」

‥は、服部全蔵さん何してんのオォォォ!?いや、でもこの人がピザ配達してるやつ見たことある。
落ち着け私。ただお金を払えば終わりだ。

「じゃあコレで。」
「‥‥‥」
「?」
「‥‥‥」
「‥‥‥」

全然受け取ってくれないんだけど。1200円丁度。っていうか、この人何処見てるんだ?髪の毛でよく分からないけど‥‥部屋の中?

「お前、このピザ一人で食べるのか‥‥?」
「‥‥そうですけど。」
「‥‥‥。」

なんか憐れんでないこの人。大きなお世話だよ!!私だってなー、一緒に食べる人くらい‥くらい‥‥。

「分かった、何も言うな。ぐすっ。」

な、泣かれた!!私が泣きたいわ!!ぐすん。

「ちょっくら待ってろ。すぐ店戻って退勤してくるからよ。」

お金を握り締めた次の瞬間、彼は消えた。消えた?え、私どうすればいいんだ?ピザ持っていかれた!!
‥‥考えていてもしょうがないので、とりあえず部屋に入り、店に電話をかける。

「あの、配達の人がお金だけ持ってピザと一緒に帰っちゃったんですけど。」
【あー、もしかして服部ですかねー。あいつ急いで戻ってきたかと思ったらさっさと帰っちまいましたよー。】
「え?」
【ピザはまたあいつが持ってったんですぐ着くと思いますんでー。】
「は?ちょ『ピンポーン』‥‥」
【あー、着いたみたいっすねー。ご注文ありがとうございやしたー。】
「‥‥」

すごく嫌だけど、お腹も空いたししょうがない。お金も払ったわけだしさ。背に腹は代えられない。

ガチャ

「‥‥」
「すまん、待たせたな。酒でも呑んで楽しくやろうぜ?」

ガサリと袋を揺らす服部全蔵。お酒だ!わーわー、缶ビールやらつまみやら沢山入ってる。いや、別に食べ物につられたわけじゃない。
とかなんとか思っている間にさっさと中に入っている服部さん。

「さ、今日は呑もうぜ。」
「‥‥」
「トコトン付き合うからよ。」

なんか凄い憐れみを受けている。まあ、でもたまには呑むのも有りかもしれない。なんだかんだいって必死だったから全然呑んでなかったし。




この後彼は浴びるように酒をあおり、ずっとブツブツと愚痴っていた。最終的にベロンベロンになって家を出て行った。結構ひどい有り様だったので泊まっていけば、と思ったのが顔に出ていたのか、

「ふん、初対面の女とっつかまえなきゃいけねーほど俺は飢えてねーよ。」

ともて男ぶりをアピールされた。仲良くなったら危ないってこと?てかこの人ってブス専だったような‥‥。
あれ、コレって怒るべきなのか?