弐拾捌

こんにちは。あの後まさちゃんはずっと機嫌が悪かったのですが、お客さんには笑顔で対応していました。流石。



さっちゃんが来た次の日、その客は唐突にやってきた。時刻は夕方前、客が徐々に引き始め、ひと息ついていた時だった。

「げっ。」

まさちゃんが唐突にあげた嫌そうな声に顔をあげた。其処にいたのは髭をたくわえたダンディな葉巻が似合いそうな感じの男性と、にっこりと笑みを携えたメイドさん。
メイドさん!?と思わず二度見をしてしまったのは許して欲しい。だって生まれてこの方メイドさんなんてコスプレ以外に見たことないんだもん。

「何しに来やがったんですかぁ父さま?」
「久しぶりに会えたからってそんなに恥ずかしがらなくても良いだろう!」
「旦那様、お嬢様は恥ずかしがっておりませんよ。」
「はっはっはっ、そうかそうか!」

陽気なお父さんですね。メイドさんはニコニコしながらキッパリと否定してるし。まさちゃんが眉を顰めたまま腕組みをして言った。

「まったく、昨日さっちゃんから聞きましたよぉ。何を考えてるんですかぁ糞親父。」
「そうかそうか、そんなに嬉しかったのか!喜んで貰えて私も嬉しいよ!」
「旦那様、お嬢様は喜んでおりませんよ。」
「松平から幹部二人が来ることになったと連絡が入ったのだ!良かったなぁまさ。真選組は何だかんだ給料はいいし、幹部はイケメンで有名だ!いやー、これで我が家も安泰だな!!」
「だぁれが見合いなんかしたいって言ったんですかぁ。迷惑なんてすけどぉ。大体、真選組の幹部なんてお断りですぅ。あんなゴリラとかマヨとかドSとか地味とか。」
「なぁに、心配するな!お前が一人では心細いと思ってな!相手さんも二人ということだし、ユキさんにも来て貰えばいいぞ!」

……え?
な、なんか今私の名前あがらなかった?

「はぁぁぁぁあああ!!??ふざけんじゃねぇぇええ!!ユキさんまでテメェの我が儘に付き合わせてたまるかってんですよぉぉおお!!」
「そうかそうか!そんなに嬉しいか!」
「テメェェェエ!!」

え…えー?結局どうなったんだ?と思っていたらメイドさんかまさちゃんに近付いて笑った。

「お嬢様。」
「なんですかぁ清さん。」
「旦那様もどうせ聞いてないですし、どちらにしろ既に店も予約してありますので中止は出来ないのです。だったらいっそのこと美味しい料理だけでも食べていらしたら如何ですか?」
「むぅ…」
「因みに、店はお嬢様がずっと行きたがっていたあの店です。」
「!……、うー…!!」

まさちゃんががっくりと肩を落として私に近付いてきた。どうやら決まったらしい。

「ユキさん…」
「はい。」
「日曜日、空いてますかぁ…?」
「え?あ、うん。」
「……、…ご飯食べに行きませんかぁ?」
「ご飯?」
「私の、お見合いなんですけどぉ…、私受ける気全くないんで。ただのお食事会ですぅ。」
「私がまさちゃんのお見合いについていくの?大丈夫?」
「向こうも二人来るらしいので問題はないんですぅ。因みに、お店はあのみしゅらんで三ツ星を獲得した日本食レストランなんですぅ!!予約は三年先とかいって、全然とれないんですよぉ!!!」

そこか。そこに惹かれたんだねまさちゃん。でもみしゅらんかぁ…なんか過ごそうだね。機会が無ければ一生行かないだろうな。

「代金は糞親父持ちなんで気にすることはありませんよぉ!!」
「え、でも…」
「無理に誘ってるんだから当然ですよぅ!余分な奴等が居るけど、私ユキさんとお食事してみたかったですしぃ!」

そ、そんな事言われたら断れないじゃないか!基本的に知り合いが少ない私。そりゃあ、そんな事言われたら嬉しいもの!

「わかった。私でよければ。」
「!!ありがとうございますぅ!あっっ!!相手の男共はジャガイモと思ってくれていいんでぇ!寧ろそうして下さいぃ!」

?よくわからなかったけれど取り敢えず頷いておいた。と、いうことでお見合い行くことになりました。
後で気恥ずかしいのは嫌なので、お化粧頑張ろう。