参拾壱

土方さんが帰っていって再び訪れる沈黙。三人で黙々と目の前の料理をつついていた。え、どうすんのコレ。
というかこの中で一番年上なんだから私がしっかりしなきゃだよね。


「すいませーん、食後のデザートをお持ちしたんですけど。」
「はぁい、どぉぞぉ。」

ガラリと開けて現れたのはグラサンのマダオ。
…………此処でェェェェエエ!?
え、此処で来るの長谷川さん。いや、確かにタクシー利用したり公園行ったりしないから接触する機会はなかったけど。此処で?

「柚子のシャーベットになります。ではごゆっくり。」
「あ、ちょいと待ちなァ。あんた、どっかで会ったことないですかィ?」
「(げっ、真選組の兄ちゃんじゃねぇか!)さ、さあ?気のせいじゃないですかねぇ。」

冷や汗をかいている長谷川さんと、長谷川さんをじーっと見ている沖田さん。少々不穏な雰囲気の中、それよりも私が気になっているのは柚子のシャーベット。いや、だって金箔のってる。サッパリしてそうで美味しそうだよ。
シャーベットに気を取られながら2人の様子を窺っていると、外からガッシャーンッッと大きな音が聞こえてきた。

「げっ、あいつ等今度は何を…す、すいません、失礼します。」
「…へい。」

閉じられた障子のすぐ外で長谷川さんが叫ぶ声が聞こえる。

「ちょ、銀さん今度は何やらかしたの!」
「あー?俺は何にもやってねぇよ。」

あれ、もしかして万事屋ファミリー居る?

「じゃあ今の音は…ギャァァアア!!」
「神楽ちゃん!?」
「…取れちゃったアル。」
「どうすんのコレ!またクビになっちゃうよ!」
「こうすりゃ直んじゃね?…あ。」
「ギャァァアア!!」

…大変だね長谷川さん。少し切なくなりながら障子を見つめる。それにしてもこのシャーベット美味しい。

「なんか廊下が騒がしいですねィ。」
「そんな心配しなくても大丈夫ですよぉユキさん。ちょっとお化粧直すついでにシメて…様子見てきますねぇ。」

今シメてって言った!?逃げてー!あ、でも銀さんとまさちゃん仲良いし大丈夫かな。
まさちゃんは沖田さんと無言でアイコンタクトをしてから部屋を出て行った。え、アイコンタクト?何にも言わなくても伝わっちゃう阿吽の呼吸とかいうやつですか?す、すげー!!

「(ユキさんに変なことすんじゃねーぞ、か。言われなくても出来ねえよ。)ユキさんコレ美味しいですねィ。」
「あ、はい。とても。」
「土方さんの分余ってるんでどうぞ。」

因みに土方さんの料理は皆で分けて食べた。美味しかった。

「え、でも。」
「ほら、食べないと溶けてしまいますぜィ。」
「え、あ、はい。…ありがとうございます。」

美味しい。少し溶けてきてるけど、それはそれでまた口触りがちがって美味しい。

「はは、本当に美味しそうに食べやすね。」
「え、見てたんですか?恥ずかしい。」

まさか観察されてるとは思わなくて、顔に熱が溜まる。思わず頬を手で抑える。

「っっ!」

ん?なんか総悟くんが口を抑えて向こうを向いてる。そ、そんなに面白かったですか?
あれ、よく見ると耳が赤…ガラッ

「ただいま戻りましたぁ…ん?何してるんですかぁ?」
「へ?いや別に…なんでもないよ。」
「…そぉですかぁ?あ、それよりも迎え呼んだんで、三十分くらいで来ると思いますぅ。」
「さっ…(三十分!?たったのそれだけしか無えのか!…いや待て、下手に引き止めてもユキさんに負担かけるだけだよな…)」
「そっか、ありがとう。」
「こちらこそ、今日はありがとうございましたぁ。お料理美味しかったですねぇ。」
「うん、とっても。ね、沖田さん。」
「はっ、はい!」

うんうん。ありがとう御馳走様。
この後三人で雑談をしていたらお迎えが来て、総悟くんに見送られてまさちゃんの家に帰った。そういえば途中で変に疲れた銀さんとすれ違ったけどまさちゃんと何があったんだろうか。