君と過ごすA

夜―…

暗くなった街を照らすコンビニの光。街灯の少ないこの辺りには有難い光源だ。漸く見えてきたコンビニに胸を撫で下ろす。
店内に入り見渡してみるが、銀さんはまだ来てないみたい。雑誌でも読んで待ってよう。

「すまねぇ!待たせたか!?」
バタバタと店に駆け込んできた彼を見て、雑誌を閉じる。
「いえ、まだ時間前じゃないですか、大丈夫です。行きましょうか。」
「おー、」

暗い道を歩く。なんかチラチラ見てくるんだけど。

「…わ、悪かったな、うちのガキどもが何処行くんだってしつこくてよー。」

神楽ちゃん達が?

「坂田さんてお子さんいらっしゃるんですね。」
「ち、ちげーよ!従業員だよ従業員!」

知ってるよ、言ってみただけ。そんな怒鳴らなくてもよくない?

「だ、だからよぉ、そんなん気にしなくても…」
「あ、ここです。着きました。」
「あ、そう…。」




この居酒屋は創作料理が多い。お洒落で落ち着きあり、女一人でも入りやすいのでたまにお邪魔している。大将は厳ついが愛嬌があり、繊細な料理を作る人だ。今日は誕生日用にいくつか見繕ってくれている。
ビールに始まり、銀さんは日本酒、私は梅酒ロックに落ち着いた。初めはお互いにぎこちなかったが他愛ない会話をして楽しく飲んでいた。

「今日はよー、なんで飲みに誘ってくれたんだ?」
「え?」
「ホ、ホントは昼間、俺から誘って付き合ってもらおうと思ってたんだけどよー…

ちょ、もにょもにょ言っても聞こえない。酔ってんの?顔は真っ赤だけど。あー、お酒弱いんだっけ?

「坂田さん、ちょ、寝ないで下さいね?」
「……はあ。」

なに。まあいいや。

「大将、アレお願いします。」
「あいよ。」

コトンと坂田さんの前に置かれたのは2、3人用の大きさの小さなショートケーキ。中央には『Happy birthday』と書かれた板チョコ。

「!…これ、」
「誕生日、おめでとうございます。」

銀さんはケーキから目を離さない。シンプルだけど美味しそう。

「今日はもうケーキは食べただろうから、小さいので我慢して下さいね?」
「…」



「坂田さん?」
「―…おまっ…、」

口を押さえて下を向いた。え、吐くの?吐きそうなの?銀さァァァァん!?この場はやめて!!




−−−−−−−−−−
(…)
((反則だろォォ!!))



銀さんハピバ。