ホストな君

天使の休息所、高天原が大ピンチらしい。
業界では「1度目は福を運ぶ天使、2 度目は不幸を運ぶ死神」と呼ばれているマダム夜神が今夜2度目の来店をするらしい。その噂にビビって八郎さん以外のホストが全員店を休んでしまったそうで、万事屋や真選組らの協力を得て精一杯の御持て成しをしようとしているそうだ。
そして私はお妙さんに脅さ…誘われて、高天原の前に来ていた。そして、西郷さん達に引っ張られて店内に入ったのだった。


「俺、ホストになって日が浅いんだけど、バカな雌豚に媚び売って貢がせれば良いんだよな?」
「やぁだ〜、SOUGOってば酷い〜。」
「ね〜っ。」
「もちろん、君たちは特別だけど?」
「「キャーッ!!ドンペリお願いしまぁーす!!」」

思わず二度見してしまった。ホストだ!ホストがいるゥゥ!!
周りは既に戦場だ。狂死朗さんはかま軍団に捕まり、万事屋+αはこの後の作戦会議をしている。
私これ帰っていいよね?

パリーン

ん?
音のした方向を見る。

「え、ユキさん…?」
「どうしたのぉSOUGO?」
「だぁれアノ女?」

総悟くんがコッチを向いて固まってる。スーツ似合うね。女の子達が困ってるよ。

「…」
「…」

総悟くんが固まったままだから女の子達帰り支度始めちゃったよ。あ…行っちゃった。

「う、あ、な、なんでここに!?」
「え?あぁ、お妙さんに誘われたんです。」
「姐さんが?そ、そうなんですねィ、」
「…今日はホストなんですね。」
「あ、あの、ホントはこういうの苦手なんですけどねィ…、この街の危機、らしいんでさァ。真選組としてはやっぱりほっとけなくて…。」

凄いなぁ。いつ見ても真面目に仕事してるよ。アイマスクで昼寝なんて、ホントは働き過ぎて倒れる直前なんじゃないの?

「あ、すみません。お仕事の邪魔してしまいましたよね。」
「い、いえ、そんな!!」
「私そろそろ帰りますね。お妙さんには顔出すように言われてただけなんで。」
「お、送りやす!!」
「そんな、大丈夫ですよ。明るい道選んで帰るんで。」
「よ、夜道を女性一人で歩かせるなんて、そんな危ないことさせれやせん。」

お、男前ェェェ!!男前がいるよ!こりゃモテるわ。格好良いし、紳士だし、可愛いし。ドSぶりを体験してないから分からないけど、こりゃモテるわ!

「でも、お仕事中ですよね。」
「お、俺の今日の仕事は土方さん達を屯所に連れ帰ることなんでさァ。あの人達酒弱いんで…。キチンと車で送り届けるんで、終わるまで、…話し相手、になってくれやせんか…?」

うーん、まぁ元々お妙さんに絞り取られるつもりで来てたんだしいいか。私もたまには呑みたいし。

「はい。いいですよ。」
「っ!!!」

効果音を付けるなら、ぱあぁぁぁぁっ…って感じ。眩しい!総悟くん眩しいよ!!
総悟くんの後ろについて店内の隅にある座席につく。

「あ、何呑みます?」
「こういう所来たことないからよく分からないんですよね。えーと、取り敢えず水割りで。」
「はい。」
「…沖田さんは呑まないんですか?」
「この後車なんでねィ。…それに、一応未成年なんでさァ。」
「あら。」

真面目だな。飲酒運転は駄目だけど、私18くらいになってらお酒呑んでた…ゲフンゲフン。

「なので今日はジュースにしときやす。」
「ありがとうございます。」
「あ、あの、今度お酒、一緒に呑みやせんか?一度呑んでみたかったんでさァ。」

まだ呑んだことないのかぁ。そりゃ気になるよね、酒、煙草…。駄目って言われたらやっちゃうのが未成年の好奇心てとこだよね。でもまぁ私も呑んでた口だからな。

「…はい。じゃあ居酒屋にでも行きましょうか。」
「あ、…はいっっ!!」

眩しいィィ!可愛いわ。
凝視しすぎてもアレなのでグイッと酒を煽る。銀魂の世界だもん。未成年の飲酒は大目に見てくれそう。てか、戦後だしあんまり法律とか決まってないのかもしれない。天人とかもいるからその辺は寛容そうだ。

この後、マダムが来てまたひと騒動あったわけだけど、我関せずでお酒を呑んでいた。いや、チラチラ見てました。総悟くんはお酒の匂いに当たったのか顔が赤くなってた。…運転大丈夫?
マダムも帰って店も落ち着いてきた頃、お会計を頼む。

「き、今日は俺が無理いって話し相手になってもらったんで。俺に払わせてくだせェ。」
「え、いや大丈夫ですよ。」
「い、いえ、あの、とにかく俺が払うんで!そ、そのかわり…」
「?」
「今度、絶対呑みに行きやしょうね。」

そういい残して総悟くんはパタパタと行ってしまった。うーん、じゃあ居酒屋では私が出そう。ホストクラブで呑むよりも断然安くなっちゃうけど。

パトカーで送って貰った訳だけど、後ろの座席で土方さんと近藤さんは積み重なって寝転んでた。お酒の臭いがキツくて、窓を開けさせてもらった。風が気持ち良くて少しだけ微睡んで、気付いたら家に着いていた。住所を言っただけでたどり着けるなんて凄いな。
総悟くんは車から降りて私の姿が見えなくなるまで見送ってくれてた。最後に手を振ると、彼は嬉しそうに振り返してくれた。