昼食を食べ終え、街をブラついてるユキです。
ほんの出来心で銀ちゃんにお菓子を間接的に渡してしまったけれど大丈夫でしょうか。



この世界に来て暫くの間、外出時の服はスーツを着ていた。
長谷川さんが着てたし、女でも居ないことはないだろうと踏んだのだ。案の定、デパートに行けば種類は少ないものの、販売していた。ブラウスを数着買い込んだ。
この世界にいる以上、着物が必須となるが、やはり着物となると安いものではなく、1着だけ購入することした。肌着と長襦袢、帯などの説明を受け、一緒に購入。お店の人に頼んで着付けてもらった。
しかし、一朝一夕で出来るようになるものではなく、完璧に着れるようになったのは今の団子屋の女将に教わってからだった。

さて、何件かの小物屋を冷やかしたあと、今日の本命、香水を見に行く。使っていた香水が残り僅かなのだ。なかなか気に入る香りがなかったため、わざわざ調合してもらった一品物。まさちゃんに相談したら、お店を紹介してくれた。
やはりこちらでは珍しい香りらしく、調合に時間がかかるといわれた。それくらいは承知の上だったので問題なく頼むことにした。

店を出て来た道を引き返す。着物を着るようになって、女らしい所作をするようになった気がする。歩幅は小さくなり、姿勢が変わる。ちょっとしたことなのに自分が大きく変わったみたいに感じる。
暫く歩くと、ピンクの着物を着た人が目についた。あー、姿勢って大事。後ろ美人とはあの人みたいなことをいうんだろうな。

「お妙さァァァァんっ!!」
「何ノコノコ現れてんだてめェェェェッ!!」

ドゴォッッ

………お妙さんだった。マ、マジでかあぁぁっ!!すごい吹っ飛んだんですけど。殴ったあとめっちゃ笑顔なんですけど。お、お妙さん半端ないな。
素敵な笑顔を浮かべたお妙さんはゴ…近藤さんをを放置したまま去っていった。

え、どうしよう。このまま歩いたら近藤さんにたどり着くんだけど。倒れてる人に駆け寄るなんて、よっぽどの良人か下心を持った人か警察くらいだ。大半の人が見てみぬフリをするのは大衆の事実だ。
…とはいえ、彼は一方的だけど知っている。
近藤さんはうつ伏せに倒れてるため、傷は見えない。暫く起きる様子もなさそうなので、手に絆創膏を握らせてその場を去ることにした。



元の世界で買った、可愛いキャラクターのイラストが印刷された絆創膏。…あれ、有名キャラだったけど此方ではどうなんだろう。