飲み込む言葉

「おやユキ殿ではないか。」
「……こんにちは。」

無言の抵抗くらい許して欲しい。
仕事が終わった午後。甘いものが食べたくなって店を物色している時、その人物と出会った。

「このような所で何をやっているのだ?」
「え。あー、甘いものが食べたくなって。カフェにでも入ろうかなぁと思いまして。」
「ふむ。やはりオナゴは甘いものが好きなのだな。よし、俺も行こう。」
「え。」

え…。えええ!!?桂さんも行くの!?…えええええ。
いや、だって…ええ。

「俺は銀時のように甘党なわけではないのだがな。世の中の流行りを知るのも革命家として大事な事なのだ。」
「はあ。」
「それに今思い出したのだが…」

私危険じゃない?指名手配犯と話し込んでる(ように見える)なんて。し、真選組の人に見られてないよね?大丈夫だよねこれ!?

「今日は俺の誕生日なのだ。」
「は…」

頭の中で色々な事を考えていたせいか、桂さんの零した爆弾発言に思考が停止する。え、この人今なんて言った?

「うむ、近頃忙しくて忘れていたが6月26日の今日は俺の誕生日だ。」

そんな事を聞いたら同伴を断るなんて出来なくて。出そうになっていた断りの言葉を飲み込んで、溜め息を吐いた。

「行きましょうか。」

うむ、と頷いた桂さんを連れ立って一番身近なケーキ屋に入る。幾つか見繕って、それをお土産に包んでもらって桂さんにお祝いの言葉と一緒に渡した。
武士がオナゴに奢ってもらうなど出来ぬ!と男気を見せていた桂さんだったけれど、不穏な気配を察したらしくチラリと店の外に視線をやってから一度頷いて受け取ってくれた。
なんかこう…パターン的に危険だと察した私は正解だったらしい。

桂さんが店を出て数秒後。遠くでバズーカ音が聞こえてきて安堵の息を吐いた。

…確実にケーキはグチャグチャだろうな。





ヅラ忘れてゴメンね!ハピバ!