輝く銀色

※金魂編。IF主が金魂編を知らなかったら。





「よぉ、なんだか久し振りだな。」

………ん?
食器を片付けに厨房を出て店先に向かうと、いつの間にか座っていたお客さんがニヤリと笑みを浮かべながら片手をあげた。常連さんなので顔は覚えているけれど、私はあまり面識が無い。いつもまさちゃんが居て、まさちゃんを通じて会話してる感じだから。

「いらっしゃいませ。」
「ったく、なんだよその顔は。そんなに俺に会えなくて寂しかったのか?」

…何この人。
前から思っていたけれど、顔は格好良いのに凄い残念な人だ。高杉さんから貰ったお菓子とか、大体食べてるからねこの人。
しかも服装は銀魂の銀さんみたいな格好だし、まさちゃんから聞いた名前は坂田金時。どんな疑似キャラ。え、もしやコスプレ?それとも銀さんの親族ですか?
しかし私の知識の中に坂田金時さんは居ないので、はっきり言えば知らない人だ。

「まさちゃん今日はお休みなんです。」

だから、まさちゃんの知り合いだっていうことは分かっているけれどそれだけで。

「そうなのか?でもまぁ、今日はお前に会いに来たんだよ。」
「…はあ。」
「もうすぐ仕事も終わりだろ?呑みにでも行かねえか?」

……何この人。
なんで顔見知り程度の人を誘うんだろう。まさちゃんには悪いけど、この人怖い。イケメンだし金髪だし、この人チャラい人なんじゃないかな。…まさちゃん騙されてないよね、大丈夫だよね。

「いえ、私用事がありますので。」
「まぁそう言うなよ。美味い店見つけたんだ、奢るぜ?」

………何この人。凄いしつこいんだけど。

「…」
「…可笑しいな、洗脳効いてねぇのか?」

洗脳?
さっきまでにこやかだったのに、突然冷めた目で見てくる坂田さん。何、何この人…、怖い。
そう思った次の瞬間、坂田さんは後ろへと飛び退き、私の視界は白で埋まった。

「ってめぇ!!」
「おっと、いきなり危ねぇじゃねえか銀時ぃ。」

白く埋まった視界に驚いて一歩下がると、光り輝くのは銀色の髪。地を這うような声に、けれど聞いた事のある声に思わず目を見張る。

「…コイツに手ぇだすな。」
「へぇ、まぁいいさ。今日は只の様子見だったしな。」

じゃあな、と片手をあげて店を出て行った坂田さんを視界に納めながら、私は目の前の人物に釘付けになっていた。

「、あーその…大丈夫だったか?」

振り向いた彼は気怠そうな瞳をウロウロさせ、片手で頭を掻きながら言った。その表情には戸惑いとか気恥ずかしさとかの感情が見えたけれど、確かに心配の色も見えていて。

「銀、さ…」
「!!」

ポツリと呟いた彼の名前はどこか掠れてしまって。彼が目を見開いた理由をその時の私が知る筈も無く。
銀さんは俯いた後ふっと笑って、ポンと私の頭に手を置いた。そして、一度撫でた後に小さく決意を込めた言葉を残して去っていった。

「絶対ぇ、取り戻してくっから。」

この世界に来て初めて出会った主人公に柄にもなく感動して、あまりの格好良さにきゅんとしたのだった。