僕らで過ごす

10月9日。外から帰ってくるなり箪笥から風呂敷を引っ張り出した神楽にチラリと視線を向けた。

「あ、銀ちゃん!今日お泊まりしてきてもいいアルか?」
「は?あ、あぁ。別にいいけど。」

なにやらウキウキとしながら、着替えやら宇野やらを詰め込んでいく神楽。たった一泊なのに一体何をそんなに詰めてんだか。

ふと、その姿に疑問を感じる。普段新八の家に行く時は手ぶらで行くような奴だ。しいていうなら番傘くらいしか持たない。
寝転びながらジャンプを読むフリを継続しながら、神楽に視線を向ける。

「別にいいけどよぉ…なんだお妙の家か?変わり映えなんてしないだろうに、お前も毎度毎度飽きないねぇ。」
「違うネ!今日はユキ姉の家でお泊まりアル!!」

は、ユキ?は?

「因みに新八も一緒にネ!!」
「は…はぁぁぁぁあ!?」

なんだそれはァァァ!!?確かに絆されてくれりゃあ良いと思ったよ!?神楽に。新八に。
…でも俺はァァァァア!!?
肝心の俺が入ってねぇじゃねぇか!!
つーか寧ろ絆されたのは俺達じゃねぇじねぇかァァァ!!

いや、百歩譲って女同士の神楽は良いとしよう。でも新八はメガネで男だ。思春期真っ盛りな男だよォォォ!?

「じゃ、行ってくるアル!!定春、銀ちゃんの事よろしくネ。」
「ワンッ」
「え?あ、ちょ、おいィィィ!!」

ガラガラッピシャン!!

「…」
「…」

「定春…」
「ワフッ」
「目指すはユキの働く甘味屋だ!!」
「ハァ…」

定春に呆れた目向けられようが、溜め息を吐かれようが知るかァァァ!
別に一人だけ除けものにされて寂しい訳じゃねぇし!拗ねてなんかねぇしィィィ!!

万事屋を出て、歩き慣れた道を電柱に隠れながらこそこそと歩く。いや神楽は既に見えないのだが、気分的に。なんだかんだ付き合って付いて来た定春の顔が近い。これ隠れてなくね?

甘味屋に着けば店先に座った神楽と新八を発見。暫く観察していると、神楽が立ち上がって私服姿のユキが出てくる。そのままニコニコと会話をしながら三人は店を出た。

何故直接ユキの家に行かなかったかといえば、本人の家を知らないからだ。なので、そのまま一定の距離を保ちながら跡をつけて行くと辿り着いたのはスーパー。そこでなにやら大量に食材を買い込んだようだ。…客観的に見るとスゲェ量だなオイ。

三人がスゲェ楽しそうにしながら来た道を戻って、漸くユキの住む家に辿り着いた。外はすっかり日が暮れ、近所の家からは夕飯の匂いが漂ってくる。
ぐぅぅと小さく俺の腹が鳴ると、その隣では定春の腹が遠慮なく鳴る。それにギョッとして定春を宥めれば、開いた窓から聞こえてきた会話に意識を捕らわれた。

「わぁ凄い沢山作ったねぇ。」
「神楽ちゃん、飾りはもう十分じゃない?」
「あと少しネ!折角の誕生日なんだから、銀ちゃんをビックリさせるアル!!」
「あはは、そうだね。じゃあそれが終わったらご飯にしようか。」
「分かったアル!」
「ならケーキの飾り付けはその後ですね。神楽ちゃん、デザイン画は描けた?」
「完ぺきヨ!ほら!!」
「わ、凄い可愛く描けてるね。坂田さんも絶対喜ぶよ。」
「どれどれ?…あ、ホントだ。上手に描けてるね。」
「出来たアル!!新八早くご飯にするネ。」
「はいはい。ほら、片付けるから手伝って。」
「仕方ねぇなぁ、ぱっつぁん早くしろよ。」
「オイィィィ!」

さっきまでのくすんだ気持ちは嘘のように晴れていて。

隣の定春と目がパチッと合い、ポリポリと頬を掻いた。

「…」
「…」
「…帰って俺らも飯にすっか。」
「ワンッ」






銀さんハピバ!!