こんばんは。高杉さんに連行され帰ってきました我が家。沈黙が痛いとはこのことですか。



部屋に入り、電気を点ける。高杉さんは何も言わず窓際の角を陣取った。私といえば、テーブルの脇に正座をしている。
チラリと様子を伺うが我関せずだ。それにしてもお腹空いたな、何か食べたい。食べていいかな。そういえば高杉さんは食べたのかな、…食べるかな。
思わず溜め息が漏れる。すると自然と視線が合う。暗闇で見た鋭さはあまりなくて、ただ純粋に不思議そうな顔をしている。

「…お腹空いたんで何か食べていいですか?あ、貴方も食べますか?」
「ククッ、勝手にしろ…俺のことは気にするなァ。」

いらない、ってことかな。そういえば煙管どうしたんだろ?部屋に着いてから吸ってないな。
冷蔵庫からゼリータイプの栄養補助食品を取り出して口にくわえる。お腹は空いているんだけど、食べるのが面倒臭い時がたまにある。疲れてるときとか。高杉さんが食べるって言ったら作ったけど。
くわえたまま棚をゴソゴソと漁る。コンビニでもらった灰皿があったはず。あ、あった。灰皿を手に持ち、高杉さんに近付く。

「これ、よかったらどうぞ。」

他人の家だからってそういう事気にするんだ。なんか可愛く見える。
そんな邪な考えをしていたからか、高杉さんが怪訝な顔をする。

「…それだけか。」
「?何がですか?」
「……メシ。」
「へ?あ、あぁ。面倒なんで。」

眉をこれでもかと寄せて見上げてくる。何?…ま、いいや。

「で、結局なんの用事ですか?高杉さん。」

煙管をすぱーってする高杉さん。煙管ってタバコとは違う渋さ?があってカッコイイよね。

「…俺のことを知っててその態度とは、酔狂なやつだ。」
「ゆ、…有名ですからね。」

墓穴を掘ったらしい。町人ってあんまり知らないもんなのかな。それともまだそんなメジャーじゃないとか?

「…ククッ、まぁいい。今日は様子見だったからな。」
「はぁ。」

よく分からんな。
その後何を話すでもなく時間は過ぎ、風呂を済ませてうとうとしても高杉さんはそこにいた。嗅ぎなれない刻み煙草の香りは不思議と心が落ち着いて、瞼が重い。

朝日の光によって目を覚ました時、すでに高杉さんは居なかった。
何がしたかったんだろう。