二日目


朝、目が覚めると見慣れない天井があった。暫くぼんやりと見ていたのだけれど、昨日の出来事を思い出して思わず飛び起きた。

「夢じゃ、ない…」

リリーに乗り移ってしまったことも、此処がホグワーツだということも。
同室の子はまだ眠っているようで、寝息が聞こえてくる。朝食まではまだ時間があるようなので、校内を散歩でもしようと服を着替えてカーディガンを羽織った。



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昨日、リリーに促されるがままリリーの部屋に行き、話した内容はとても不思議なものだった。

”まずは自己紹介かしら。私はリリー・エバンズよ”
「ヨシダユキ…です。あの、リリーちゃんは…」
”やだ、ちゃんなんて付けなくていいわ。勿論敬語もなし。私もユキって呼ばせて貰うし!”
「え、と…じゃあリリーは随分と落ち着いてるね。体乗っ取られたっていうのに…」
”そうねぇ。ゴーストの存在を知ってるっていうのも理由の一つだけれど、一番は嫌な感じがしないからかしら”
「嫌な感じ?」
”うーんなんて言えばいいのかしら。悪意とかそういうのを感じないし、居心地良いもの。きっと私達の波長が合うからだわ。”
「波長…?っていうかゴーストって…」
”ホグワーツには沢山のゴーストが居るのよ。私はマグルだから此処に来て初めて見たんだけれどね”

それからホグワーツの事、魔法の事、交友関係など、色々な事を聞いた。
勿論、自分の事も少しだけだけど話した。事故にあった事、おそらく───死んでしまった事。
その話をしたとき、リリーは少しだけ悲しげな声を出してから、直ぐに楽しそうな声をあげた。

”なら、きっと私達が出会ったのも何か縁があるんだわ!”
「…」
”今はまだ悲しみばかりかもしれないけれど、きっとアナタを思っている人達は思う筈だわ。天国で元気にやってるだろうかって”
「…」
”ユキが私と出会ったのは、意味があるわ。今は伝わらないかもしれないけど、いつか出会った時に私が言ってあげれる。ユキは元気でやってるわって!”
「リリー…」
”いつまでこの状態なのか、とか分からない事だらけだけれど、一生に一度無いくらいの奇跡だわ!精一杯楽しみましょうよ”
「うん、うん…っ」



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その後暫く泣いてしまった私。リリーは何を言うでもなかったけれど、胸の内が暖かかったからきっと優しい顔をしていたんだと思う。

「少し冷えるな…」

リリーの体を乗っ取った今、正に一心同体な状態だ。だけれど意識は別々らしく、リリーの意識は未だ寝ているみたいで返答はない。
中庭みたいな場所に出たので、そのまま近くのベンチに腰掛ける。此処がホグワーツなんて今でも夢みたいだ。いや、夢なのかもしれない。本当は死んでなんかいなくて、ハリポタの夢を見ているんじゃないかって。リリーには言えなかった。だって、此処は物語の世界だなんて信じろってほうが無理な話だ。それに、リリー・エバンスといえばハリーの母親だった筈。ならばリリーは此処を卒業して数年後…

「リリー?」
「え?」

考える事に没頭していると、不意に聞こえた声に視線を巡らす。すると数メートル離れた場所から此方を窺うように見ている男の子を見つけた。

「どうしたんだこんな朝早くに。」

誰だろう、なんて思ったのはほんの数秒で。ねっとり、というよりはペッタリとした黒い髪、少し顔色は悪そうに見え、ネクタイは緑色。あぁ、この時代には彼も居るんだ。

「セブルス…」
「、なんだ?」

まだリリーは生きていて。セブルスとの仲も存続していて。

「なんでもないわ、ただ少し早く目が覚めただけ」

私が此処に居る理由───。これが例え夢だとしても。ううん、夢だからこそ。

自責の念を抱え続ける事になるだろう彼と死んでしまう彼女を、救う事が出来るんじゃないかって。

ほんのりと頬を染めた彼を見て、そんな事を考えていた。
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