三日目
リリーに申し訳ない事をした。
実技はともかく、書き取りくらいは頑張ろうと思っていたのに、黒板に書かれた文字を見て絶句。
”どうしたのユキ?”
「(ご、ごめんリリー。私…)」
英文なんて書けない…!!
いや、学校で習う程度のAとかBとかのブロック体なら書けるのだけれど、流石は英語がメインの国。書かれる文字は筆記体。残念な事に私にはミミズ文字にしか見えない。
「(a…u…ん?nか?ぎゃあぁぁっ先生まだ其処消さないでぇぇぇ!!)」
”そこはnじゃくてm…、大丈夫よ。後で誰かに見せて貰いましょう”
「(ごめんなさぁぁいっ!!)」
これほど英語をもっとやっておけば、なんて後悔する日が来るなんて思ってもみなかった。
さて、今日はなんとスリザリンと合同で魔法薬学の授業があるそうだ。魔法薬学ってあれでしょ?虫とか切り刻むやつでしょ?リリーは次にどうすればいいか教えるし、その通りにやれば出来るって言ってたけれど、嫌な予感しかしない。虫を素手で触るなんてしたくない。それが例え乾燥していたとしても。
「(いやぁぁぁぁっ!足が気持ち悪いぃぃっ!!)」
5ミリ間隔で切るって事は、当然片手で物体を押さえていないといけないわけで。
テレビに映るアイドルのように奇声をあげたりはしないし、出来るか出来ないかと聞かれれば出来るのだけれど。
気持ち悪いものは気持ち悪い…!!
眉間に皺を寄せて、口をきつく結び、難しい顔をしてザクザクとそれを刻む私。相当酷い顔をしていたのか、偶然隣になった(始業ギリギリに来たら此処しか開いてなかったのだが)セブルスが不思議そうな顔をして覗き込んできた。
「どうしたんだ?」
「え?なにが?」
「いや、なんだかいつもと様子が違うようだから、気分でも悪いのかと思ったのだが…」
正直言えば驚いた。もしかしたら慣れない作業で顔色が悪くなっていたのかもしれないし、手際の悪さが目立ったのかもしれない。だけれど、リリーの事を好きだと公言している(前の方の席で未だに騒いでいる)ジェームズは今の今まで、全く気が付かなかったのに。纏わりついてくるジェームズより、滅多に顔を合わさない彼のほうが、リリーの事を分かっているようで。
「平気よ。昨日夜更かししてしまっただけだから」
「そ、そうか…」
「ありがとうセブ」
「!あ、あぁ」
パッと顔を赤らめるセブにほんの少し、切なくなって。
”ユキ?”
「(…、なんでもない)」
日常生活もままならない私に、一体何が出来るんだろう。