五日目
「やあリリー!!」
中庭でリリー(に取り憑いた奴)と話していると、忌々しいポッターの声がした。ちらりとそちらに視線を向ければ奴とブラックが居た。
「ちっ」
「おや?其処にいるのはスニベルスじゃないか」
「…行くぞ」
「なんだよ逃げるのかスニベルス」
「…」
普段ならリリーがその気に食わない呼び名に反応するのだが、今のリリーはリリーであってリリーでない。その事をコイツ等に知られるのは気に入らないし、早くこの場を離れようと彼女を見る。すると彼女は怒るでもなく怯えるでもなく、どこか微笑ましそうな顔をしてポッターとブラックを見ていた。
…なんだその顔は。
「なんだいリリー!そんなに見つめられると僕も緊張しちゃうよ!」
「いやぁ…君達本当にセブの事が好きなんだねえ」
空気が凍る、とはこの事だろうか。近くに居たいつもの事かと遠巻きに見ていた他寮の生徒も思わずといった様子で、此方を凝視している。
「…え?何いってるんだいリリー」
「気持ち悪ぃ事言うなよエバンズ」
全くだ。コイツ等と意見が合うのは不本意極まりないが、同意せざるを得ない状況だ。
「好きな子ほどいじめたいって言うものね」
ブラックの吐き捨てるような口調もモノともしないで、リリー(ではない)はにっこりと笑う。
「え、えええ!?ちょ、ちょっと待ってよリリー!!僕が好きなのは君さ!なんでスニベルスなんか…」
「私にはなんていうか…お姉ちゃん構って!って感じだものね」
周りの生徒がヒソヒソと話し始める。それはリリーがいつもと違う対応をしたから、というよりも面白い事を見つけたからのようだ。女子の声が少々色めき立ったモノだった。
「その対応は君達くらいの年齢なら可笑しくはないよ。少し子供っぽいとは思うけどね」
「子ど…っ!?」
「女の子は大半が年上…というか頼れる大人な男が好みだけど、男の子はいつの時代も甘えられるのが好きだから」
「エ、エバンズ…?」
「もう少し素直になったほうがいいよ!」
言い切った感満々でにっこりと笑う彼女。それを見て異常に疲れたのは僕だけではないはずだ。
意気込む彼女は僕の手をとってじゃあ後でね!と良い笑顔をした。そのまま彼女に引きずられるようにその場を後にした訳だが、興味本位で振り返るとポッターは膝から崩れ落ちていて、ブラックは呆然としていた。
周りに居た生徒はいつの間にか居なくなっていて、あぁこれは噂になるなと遠い目をする。ホグワーツ内での情報はフクロウが持ってくる予言者新聞がほぼ全て。閉鎖的なこの場所では、面白そうな噂は瞬く間に広がるのだ。それの噂の真偽は関係ない。
「はぁ…」
溜め息を吐いた僕を楽しげに見てくる彼女に、リリーと手を繋いでいるという現状も忘れて眉間に皺を寄せた。