怪盗の正体

※『迷推理』と同主設定です。


一体何がどうなっているんだ。
今俺達の、俺の目の前には確かに怪盗キッドがいる。いや、キッドがいること自体は可笑しいことではない。犯行予告は確かに出したし、既に時間だからだ。けれどキッドの正体である俺、黒羽快斗は青子に手錠で繋がれて此処にいる。何がどうなっているんだ。

「お久しぶりですね中森警部。」
「か、怪盗キッド!?」
「おや?なんですかその反応は。まさか、その手錠で繋がれた少年が私の正体だとでも思っていたとか?」
「なっ!う、うううるせぇ!!総員、キッドを捕まえろぉ!!」
「おー怖い怖い。マジシャンも警察も手の裏をかかれたら負け。ポーカーフェイスですよ中森警部。」

もしかすると以前のように紅子がやっているのかと思ったが、そうではないらしい。不敵に笑うその顔も、声も、仕草も全てが”怪盗キッド”だから。以前のように箒で空を飛んだりもしない。いつもの口調で中森警部をからかい、宝石を奪った。途端に広がる煙幕。警察に紛れたのか、キッドを見つけることほ出来なくなってしまった。

「奴はまだこの中にいるはずだ!全員顔を引っ張れ!仮面をしている奴がいるはずだ!」

警部が叫ぶと、警備にあたっていた人達全員で顔を引っ張り合い始めた。うわウケる。この人達俺が逃亡してからいつもこんな事やっていたんだろうか。
少しにやつきながら周りを見渡していると、ちょんちょんと服の裾を引っ張られたので、振り替えると視界の下の方に頭が見えたので、自然と視線を会わせるためにかがむ。

「お礼は駅前のアイスでいいよ?」
「え?」

其処にいたのはあのいけ好かない名探偵のガキと同い年くらいの少女だった。何度か名探偵と一緒にいるのを見たことがある気がする。名前は確か─…

「吉田ユキ。」
「え。」
「ほらほら、ポーカーフェイスはどうしたの黒羽快斗くん。」
「いや、だって…なぁ?」
「まぁいいや。お礼はアイスでいいよ?怪盗さん。」
「!なーに言ってんだ?怪盗キッドならさっきまでアソコに居たじゃねーか。俺はその間ずっと此処でコレで繋がれてたんだぜ?」

驚いた。けれどこんな時こそポーカーフェイス。…と思ってしらばっくれてみたらスゲェ可哀想な者を見る目で見てきた。

「これ、なーんだ?」
「!!」

ニヤッと笑って見せてきたのはさっきキッドが盗んだ宝石だった。見せられたのは一瞬だったけれどそれは偽物だとわかった。それにしてもなんでコレをこの子が持っているんだ?

「偽物だしいいよね?」

そう言った彼女は右手で宝石を弾いて中森警部に跳ばした。…スゲェ勢い良く。
イデェッッ!と叫んだ警部に周りの警察だけでなく側にいた青子も近寄って行き、自然と俺とこの子が二人となる。

「ねーいつ行く?明日暇?」

取り敢えず、此処ではたいしたことは聞けないだろう。ならば明日にでも問い詰めるべきだろう。アイスでも食べながら。
一つ、溜め息を大きく吐いて手錠を外す。ガシャンと外れたそれをポケットにしまい、彼女を見つめてにっこりと笑った。
ポンっと薔薇を一輪出して、彼女に差し出した。

「俺、黒羽快斗ってんだ。宜しくな?」

多分だけど、この子とは付き合いが長くなる。そんな予感がするんだ。

「吉田ユキ。宜しく、快斗くん。」

にっこりと笑って彼女は差し出した薔薇を受け取った。




キッドはユキちゃんの変化。青子に疑われている快斗は手錠で繋がれてた。面白半分、興味半分でキッドに成りきってみた。
快斗が好きです。やっぱり影がある男は格好良いんだろうか。