謎解き開始

※『迷推理』と同主設定


「よぉ来たな工ど…コナンくん。」
「ははっ、久しぶりだね平次兄ちゃん。」

口元をひきつらせ笑う西の高校生探偵こと服部平次と、小さくなっても頭脳は大人の江戸川コナンくん。それを目の当たりにして笑わずにいられる訳がない。
毛利のおじさんと蘭ちゃん、コナンくんとやってきたのは大阪。駅から出ると迎えてくれたのは服部くんと和葉ちゃんだった。

「相変わらず二人は仲良いね。ね、和葉ちゃん。」
「せやなぁ。この間二人で仲良う電話しとるの見たわ。」
「へぇ!そうなんだ。」
「ところで、この子誰?可愛えなぁ!」

おっと、観察してる場合じゃないぞ。矛先がコッチに来た。取り敢えずにっこりと笑って挨拶しておく。

「こんにちは!ユキです!」
「…可愛え!!何この子メッチャ可愛え!!」
「コナンくんのクラスメートなの。家も近所で、親御さんいつも忙しいみたいだから家にもよく来るのよ。」
「へぇ。」

服部くんと目が合ったのでにっこりと笑っておく。その隣でコナンが引きつった笑いをしているけど無視だ。

「んな事よりよぉ、腹減らねえか?」
「そういえばそうね。」
「おー、そんな事やろうと思っとったわ。お好み焼きでええやろ?」
「この前連れて行ってくれたとこ?」
「そこでもええんやけどな。今日行く方向と真逆なんや。せやから別の店で堪忍な。ほな、行こか。」
「あ、ちょっと平次待ってや!さっきそこのお店で蘭ちゃんに見せたいものがあってん。行こ蘭ちゃん!」
「え?あ、うん。ユキちゃんも行こう?」
「私ここで待ってる!」
「そう?」
「お、おい和葉!!…ったく。」
「俺煙草買ってくるわ。」
「はよ帰って来いやおっちゃん。」
「ばーか、アイツ等より遅くなる訳ねーだろーが。」
「…せやな。」
「ユキは行かなくていいのかよ。」
「うん。」
「お嬢ちゃんユキちゃん言うんか?俺は服部平次や。よろしゅうな。 」
「うん、よろしくね平次くん。」
「お、おう。…おい工藤、お前の友達大人っぽいな。まさかあのちっさい姉ちゃんと同じなんやないやろな。」
「(はは、おしい。)ちげーよ。まぁコイツも複雑っちゃあ複雑だけど、組織の奴らとは関係ねーよ。」
「ふーん?」

丸聞こえな会話を聞きながら周りを見渡してみる。大阪なんて久しぶりだなー。何十年ぶり…んん、うん、久しぶりだなー。

「キャーッ!!!引ったくりよぉ!!!」
「「!!」」

突然あがった悲鳴に、平次くんとコナンくんは急いで駆け出す。私も離されない程度に着いていくと、目の前の通りを原動付自転車が走り去って行くのが見えた。

ブロロロロロッ!!

「くそっ!原チャリなんぞ乗りおって!追い付けへん!!」
「俺のスケボーも今日は持ってきてねーし…」

チラリとコナンくんがこっちを見てくる。ええ。やるの?やっちゃうの?



────

 服部Side

突然現れた引ったくり犯。原チャリに人間の足が追い付く筈もなく、ドンドン引き離される距離。逃げられてまう。対策を練ろうと工藤を見ると、隣にきちんと着いてきとったユキちゃんを真剣な面持ちで見つめとった。おい、口説くんなら他の所でやれや。

「ユキ。」
「ええ。」
「工藤どないする、逃げられてまうで。」
「…駅前のアイス三段。」
「しょ、しょーがないなぁ。」

そう言って彼女が取り出したのは二本のクナイ。え、なんでそないなもん持っとるんや。それを構えて…

パァァァアアンッ!!!
キキィィイッ、ガァァァァァア…ドンッ!!

「…は?」

何が起こったん?いや、見とったから何が起こったんかは分かっとる。
彼女がクナイを構えて投げた、と思った次の瞬間。犯人の乗っていた原チャリのタイヤが大きな音を立ててパンク。突然の出来事に対処なんか出来るはずもなくブレーキがかかり、地面に車体が擦れる。大分減速した頃に電柱にぶつかった。

「…おいおいやり過ぎじゃねーか?生きてんだろうな。」
「え、流石にあれくらいじゃ死なないでしょ。」
「それはオメェだけだ。」

ちゃっかりクナイを回収しとるお嬢ちゃんも、それを呆れた表情で見とる工藤も、今の俺には訳の分からんもんや。え?どういう事?パトカーの音が近付いて来とるのも関係あらへん。

「工藤、どういうこっちゃ?」
「あ?あーあー、アレだな。良かったな犯人捕まってよ!」
「せやな!良かったわー…なんて言うと思っとるんかこのド阿呆が!」
「はは…だよな。」
「お腹空いたなー。平ちゃんお好み焼きまだー?」
「せやな…ってオイ!」

するとユキちゃんはとても小学生がするような笑みではない、人の悪い笑みを浮かべて言った。

「探偵なんだからさ、少しくらい推理してみなよ。」
「!」

そう言って和葉達の居る店に入って行く彼女を見てグッと拳を握り締めた。

「……やってやろうやないかぁぁあ!!受けて立つでその挑戦!!」
「無理だと思うけどな…。」

隣でぼそりと工藤が何やら呟いたが、そんな事よりもこの謎を解き明かしたるという思いのほうが強く、聞こえへんかった。



──────────
(アレやろ!実は宇宙人で…)
(平ちゃん宇宙人信じてんの?)
(馬鹿だろお前…)
(誰が馬鹿や、大阪人に馬鹿言うたらあかんで。)
((仲良いなぁ…))





服部くん好き。快斗の次くらいに好き。