※『ひらけーごまっ』続編。子世代。
「お、スネイプ教授だ。」
廊下を歩いていると後方から不躾な台詞をかけられ、ピクリと眉をあげる。
声からして女なのは間違いないが、この学校に我輩をこのような楽しそうな、嘲笑うような声を出す命知らずな学生は居ない筈だ。では、一体誰だ?
眉間に皺を寄せたままゆっくりと振り返ると、見慣れない服装の女。だけど、あの頃と殆ど変わらない風貌に思わず声を失った。
「な…」
「うっひょー、スネイプ教授だ。これマジであのセブ?面影無いんだけど。マジでスネイプ教授なんだけど。」
顔だけは無表情に。声や仕草は至極可笑しそうにする彼女。昔と変わらない話し方にグッと息をのんだ。
「…っ馬鹿者!貴様今までどこに…あれから何年経ってると思ってるのだ!」
「?…」
首を傾げて暫く思案した後、指を3本立てた。
「3ヶ月くらい?」
悪びれるそぶりもなく無表情で言い切ったユキにひくりと頬が引きつる。
「10年、10年だ!既にアイツの子供も此処の生徒なのだぞ!」
「ハリーかぁ。」
そっかそっかーと頷くユキに思わず脱力する。取り敢えず此処ではろくに話も出来ないと思い立つ。こやつには山ほど聞きたいことがあるのだ。それこそ10年分。
「ちっ、取り敢えず行くぞ。」
「んじゃ私の部屋行こうよー。ジジイでも開けれない密室だから、今でも存在してるはずだし。」
「ああ。」
先を歩くユキに目を細める。10年の年月が経っても変わらぬ姿。あの忌々しい事件辺りから行方不明となったユキ。生きているのかも死んでいるのかも分からない状況で、校長の水晶にもその姿が映ることはなかった。
ポリジュースや変身術の可能性が無いわけではないが、ユキのこの独特の雰囲気やテンポは間違いなく彼女のもので。足を止めれば離れていってしまう彼女に漠然とした焦りを感じた。
「ユキ!」
「…ん?」
足を止めて振り返る彼女。私がどんな顔をしているか分からないが、彼女はふっと息を吐いてすぐ近くまで歩いてくる。
ぽんっ
「ほら、早く行こーセブ。」
スキンシップが苦手な彼女からの数少ない仕草の一つ。背中を軽く叩かれて、懐かしさに思わず口元を緩めた。
親世代すっ飛ばして子世代。教授が書きたかった。
主はあのハロウィンの日にジェムリリと一緒に時空忍術で鳴門世界にとぶ。救済済み。
研究した時空忍術の試用で取り敢えず主だけ帰還してみた。