ちんからほい


最早日常となりつつあるマルフォイとの口論。顔を合わせる度に奴は突っかかってきて、僕も聞き流す事なんか出来なくてマルフォイを睨み付ける。
広い芝の一角で行われていたこの騒動。僕の後ろにはロンとハーマイオニー(ハーマイオニーは何度も止めてと言っていた)が居て、マルフォイの後ろにはグラップとゴイル、そして数人のスリザリン生が居た。
そんな中に投下された暢気な声に僕らは自然と目を向けた。

「Mr.マルフォイ」
「…何か用ですか吉田”先生”?」

そう、その声は最近復帰したらしい吉田先生だった。僕らはまだ彼女の授業に出た事がないのであまり接点が無い。
マルフォイは嫌みったらしくにやついたが、それを咎めるわけでもなく、吉田先生はいつも通りの無表情で一通の封筒を差し出した。それを怪訝な顔でマルフォイは見つめ、問う。

「?それは?」
「君のお父上に送ってくれないかな?生憎私の梟は散歩中でね。」
「なぜ”先生”が父に手紙を?」
「なに、そう不思議な事ではないよ。君のお父上とは…級友?でね。」

ザワッとスリザリンがざわめいた。勿論僕らも驚いているのだけれど。僕らくらいの子供がいるような歳には見えないからということもある。
そういえば彼女は在学中スリザリンだったと聞いたことがある。ならばスリザリン生であろうマルフォイの父親とも面識があって可笑しくはないのかもしれない。
マルフォイは先程の態度と打って変わって目を輝かせて手紙を受け取った。

「なんと!先生は父上のご友人でしたか!」
「友人?うん、まあそうだね。」
「そうでしたか!僕も丁度父に手紙を書こうと思っていたんです。それと一緒にお送りしておきます!」
「そうかい?じゃあ宜しく頼むよー。」

先生は僕らを見もしないでサッサと来た道を戻って行く。それを慌てて追い掛けるマルフォイ。

「先生!父の在学中のお話を聞かせていただけませんか?」
「え、ルシウスの?」
「はい!是非お願いします!」

スリザリン生はしばらくその後ろ姿を眺めていたが、各々散っていった。

「助けて…くれたのかしら…」
「まさか!だって一度も僕らの事見なかったし、あの先生って元スリザリンだって噂じゃないか!マルフォイの父親とも知り合いなんだろ!?」
「でも、減点もされてないし。スリザリン贔屓っていう訳では無さそうね。」
「うん…」

口調は軽い。けれど無表情でよく分からない先生。それが僕らが彼女に対する初見。







(バサバサバサッ)
(梟便?ドラコからと………!?(ビクゥッッッ))