すりー、つー、わんっ

※『ひらけーごまっ』同主設定。親世代。




あれはまだ彼等がホグワーツの学生だった時の話だ。

ハリポタの原作はなんとなーく読んだな程度だったので、親世代に来てもキャラの特徴なんてそうそう分かる筈もなく。
だけどそんな中、子世代で覚えていたのがポッターというfamily nameとスネイプ教授、ルーピン先生、そしてアズカバンの囚人であるシリウス・ブラックだった。
物語の中でシリウスが死んでしまった時は、大きな衝撃を受けた覚えがある。それくらいハリポタの中では印象的な人物だったのだ。
そう遠くない未来、彼が被る事となる大きな罪を、痛みを、少しでも軽減出来たら、と思うくらい仲良くなってしまった私だから。まあ少しくらい頑張ってみようかな、なんて柄にもなく思ってしまった訳で。

「閉心術を物体化してみよう。」
「……突然何言っているんだ。」

今後、茨の道を歩むであろうセブルス・スネイプ氏を自室の隣にある研究室に呼ぶようになって数年。私とのマンツーマンの授業による御陰で、一般の生徒よりも着実に体力や精神力、瞬発力、実質的な力等々をつけている彼は、呆れた表情を隠すことなく応えた。

「ホグワーツ創設以来最強の努力する天才の私と、次期魔法薬学教授のセブが結託すれば容易い事だと思わないかい?」
「誰が次期魔法薬学教授だっ!…まあ出来ない事はないと思うが、そもそも開心術とは違って呪文があるものでは無いし、更に言えば個人の精神に大きく影響するものだ。」

まあ確かにねぇ。でも確か閉心術って、セブは幼い頃からやってて帝王も騙せちゃってた感じだったよね。そんな閉心術に長けた人物の協力があれば出来そうだ。

「万人向けにする、というのはなかなか難しいんじゃないか?今まで作ってきた悪戯グッズや便利グッズとは訳が違う。」
「別に万人向けじゃなくていいんだ。ターゲットは決まってるから。」

狸に騙されてから暫くして色々なコネを使って売り始めた吉田印の魔法グッズは、魔法界では知らぬ人は居ないほど有名な商品。ちょっとした小遣い稼ぎのつもりが、思わぬ荒稼ぎ状態と化している。そのグッズの幾つかはセブルスと共同で作ったものだ。セブルスも研究や開発が好きなようで、呆れた表情をしながらも嫌がる素振りは見せなかった。(寧ろ珍しく積極的だ)

「いやね、最初は簡略化した守護霊の呪文にしようとしていたんだけどね」
「…それはそれで難易度が高いが」
「何年もずーっと守護霊の呪文かけ続ける訳にもいかないじゃん?」
「……?」

何を言ってるんだコイツは、と眉間に皺を寄せるセブ。おいコラ、腕立て100回追加しちゃうぞ。
大体吸魂鬼の対処方法が少なすぎるんだよねー。

「忘却術も有りなのかなーとか、幻術かけちゃおうかとか色々考えたんだけど、私が居なくても対処出来そうなのはソレかなーと思って。」
「…お前はまた厄介なことに首を突っ込むつもりなのか。」
「まさかぁ。突っ込まないために作るんじゃん。」

シリウスが無実の罪でアズカバンに収容されてしまった場合。吸魂鬼は常人には相当キツいらしいから。当然杖も没収されてしまうだろうから守護霊の呪文は使えないだろうし。

「…はあ、分かった。」

頭の中で色々理由を並べていると、セブが重たい溜め息を吐いて了承した。
あとどれだけ時間が残っているのかは分からない。けれど、少しでも彼等の未来が明るくありますように。
私に出来ることなんて本当に些細な事だけれど。

「何がいいかなぁ。髪飾り?イヤリング?色はピンクとか?」
「…渡したい相手は女なのか?」
「いや、男だね。」
「…」

この穏やかな時間が少しでも長く続くなら、私も頑張るよ。