れりーずっ

※秘密の部屋。


「あっれぇ、ロックハートじゃーん。」
「ひ、ひぃぃぃいい!!貴女はユキ・吉田…!?何故こんな所に!?」

ニヤニヤ。これが今の彼女に当てはまる一番の言葉だろう。いや、表情はいつも通り変わらない。が、声が普段に無いくらいイキイキとし、目が輝いているのだからたちが悪い。

「いっやぁ、随分と久し振りじゃないの。」
「出来れば二度と会いたくなかっ…」
「ン?」
「ホントお久しぶりですね!い、いやぁあれから随分と経ちましたけれどお変わりないようで!」

つい先程まで自慢気に自身の話をしていた男は見る影もなく萎縮し、頬が引きつっている。その姿に思わずいい気味だと鼻で笑う。

「で?ロックハートは此処で何してんの?」
「ひっ…!?あ、いえ、あのー、」

それにしても、ユキはあれほど人の話を聞かない自意識過剰な男に一体何をしたのだろうか。しどろもどろになりながらも言葉を紡ぐ新任のロックハート。それをユキはフーンと興味なさげに一蹴すると、ロックハートは授業の準備があるからとそそくさと去っていった。
その後ろ姿を一瞥した後にユキを見ると、ユキは暢気に欠伸をしていた。

「ユキ、貴様アヤツに何をしたのだ…?」
「んー?大した事じゃないよ。ほんの少し本のネタを提供しただけ。」

思い出されるのはダイアゴン横町の書店で見た、積み上げられた大量の本。そこかしこに広告が貼られていて、写真に写った奴が神経を逆撫でするかのようにウインクをしていた。

「…つまり」
「売り上げの五割が私の物。」

サラリと告げられた言葉、ぐっと立てられた親指に、セブルスは頭を抱えた。自身が学生の頃から思っていたが、どれだけ荒稼ぎをしているのだろうか。
ユキと私で開発した物は量産が可能な物が多く、10年以上経った今でも店で見かける。まあそのおかげで学生時代、長期休暇にも困る事が無かったが。

「それにしても眠そうだな。」
「んー、私耳いいし、気配に敏感じゃん?最近バジリスクが五月蝿くてさぁ。」
「は?バジリスク?」
「そうバジリ…なんでもない忘れて。」
「なっ!?忘れられる訳が無いだろう!!貴様は何故そうやって大事な事をいつもいつも隠すのだ!?」
「いやいや、別に隠してないよ。事後報告なだけで。」
「お前は…。はぁ、今回はまぁいい。早々に薬を準備しておくとする。」
「そうしておいてー。」

しかし本のネタを提供しているのがユキだとすると、奴の書物に書いてある事は全てフィクション、もしくは他人の功績ということか。そしてもし後者であった場合、何故それが世間に露見していないのか。方法は幾つか考えつくが、一番簡潔で確かなのは…

「私たちも行こうかセブセブ。」
「その呼び方はやめろ…」

ロックハートがどのような方法で隠蔽していたのか、それがハッキリするのは数ヶ月後の話。




ユキちゃんはロックハートのことは覚えていたので事前にプロテゴ済みだった。