※『不死鳥と魔女』同設定。相変わらずのサッチ視点。
「マルコ隊長は怪我しても直ぐ治るからいいよなぁ。」
そう言ったのは昨日久しぶりにあった命知らずのルーキー海賊団との戦闘で負傷した新人クルーの一人だった。
「っ…」
丁度死角に居たサッチは咄嗟に息を潜め、拳をギュッと握り締めた。
新人のクルーや傘下の船の若い奴らがよく言う事だ。不死鳥という能力は能力者の中でも確かに逸脱していると思う。それをマルコは理解しているし、その能力を使って今まで俺達家族を守ってきた。それこそ、身を挺して。不死鳥という能力は決して万能じゃない。
若輩者の言うことだ。マルコだって今更こんな事で傷ついたりしないのも分かっていたけれど、サッチは湧き上がる感情を必死に押し殺した。
ぐっと奥歯を噛み締めれば、そこにひょっこり現れた人物。その表情に意表を突かれ、ふっと拳の力を抜いた。
「羨ましいんですか?」
「そりゃあ、俺だってあの能力があれば…って?」
「なあんだ。そうならそうと早く言ってくださればいいのに!」
にっこり。それが彼女、先日立ち寄った春島でマルコのモノになったユキに似合う言葉だろう。
片手に紫色をした(しかもブクブクしてる)液体を入れた硝子瓶を持ち、それをずいずいと新人クルーに差し出す。それに新人は隠しもせず口元をひきつらせた。
「この薬はですね。細胞を一時的に活性化させて、傷口を塞ぐっていう効果を狙ったものなんですけど…」
「いや、あの…」
「普段はマルコさんに手伝って貰っているんですけど、この薬はまだ試せてなくて…。ほら、マルコさんじゃあ効果が出たのか分からないじゃないですか。」
「ちょ、待っ…」
「良かったぁ!マルコさんみたいになりたいって公言する人が早く見つかって。私も無理やりは良くないかなーと思っていたので。ってことでどうぞ!」
「え、あ…」
「ハイ一気にどうぞ!遠慮しないで下さい!」
「「ギ、ギャァァァア!!!」」
妙な液体…液体か?を飲まされた奴らは顔を真っ青にして耳から煙を出しながら気絶した。それを見届けたユキは硝子瓶を見ながら心底不思議そうに首を傾げた。その様子に先程までの感情も忘れてプッと吹き出した。
「サッチさん。」
「ぶ、くくくっ」
ユキは大して驚きもせずに振り返った。きっと俺が此処で盗み聞きをして、怒りに震えていたのも気付いていたんだろう。実際に見たわけでは無いので能力数は未知数だが、マルコを檻から救い出したのは彼女なのだから。
「なあユキはマルコの能力どう思う?」
気持ち悪いと思うか?化け物と、思うか?
「え?いや特に何も。」
「ぶっっ」
何も?
「興味深いとは思いますけど、それは能力者全員に言える事ですからね。それに、ただ動物に変身するなら、マッチ棒でもしますし…」
いや、普通はしねえよ?
「アニメーガス…動物に変身する人も何人か知ってますし。」
悪魔の実ではなくてか?
「ある程度…まぁ、結構難しいんですけど、勉強をすれば出来たんですよね。」
「へえ…」
”魔法使い”と呼ばれる人種を今まで見たことが無かったけれど凄いんだなぁ。だけどその反面、見たことが無いって事はグランドラインの気まぐれか、はたまた狩られ過ぎてしまったのか。
この船に乗ってる奴らだってろくな育ちじゃねぇけど、この子も色々ありそうだな。なにせ、マルコと出会った場所が檻の中だったっていうんだから。
「なぁ…」
白髭という大家族の長男であるマルコが連れてきたユキ。
さりげなくマルコを支える彼女は驚くほどたくましくて。
ありがとう、なんて柄じゃねぇからその分感謝を込めて。
「いい茶葉が手に入ったんだ。茶でも飲まねえ?」
ニカリと笑って食堂を指差した。
そしてマルコに蹴られる←
サッチをコックと定めて良いのか、公式では決まってないようですが、本作は戦うコックさんです。