「この歌舞伎町に同業者がいるらしいですよ。」
ソファでゴロゴロしながらジャンプを読んでいた俺に新八が言った。
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「立派なお家ですねー。」
給料についてお妙にチクると脅しに出た新八の言葉を遮り、昼ドラを見ていた神楽を引き連れて、噂の同業者に会いに来た。べ、別にお妙が怖いからじゃないからあぁぁぁ!
着いた先は大きな屋敷。表札はなく、暖簾が掛かっている。インターホンも見当たらないので、扉を叩こうと一歩を踏み出した時だった。
「あら、何か御用ですか?」
鈴が転がるような声が後ろから聞こえ、思わず振り返る。
そこには藍色の着物を着た20代前半くらいの女が首を傾げて立っていた。
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新八Side
「あっ、すみません。ここが万屋だと聞いて来たんですけど。」
「え?えぇ。確かにここは万屋ですけど、"万事屋さん"が依頼…ってことはないですよね?」
「僕らを知ってるんですか?」
「オネーサン誰ネ。」
「あぁ、私はこの店の店主、ユキと申します。」
立ち話も何ですので中へどうぞ。と中に案内され、自己紹介をしながら中に入る。部屋は綺麗に整頓されていたが、机の周りだけ本が散らばっていた。
「すみません、調べ物をしていたので片付いてなくて。」
「い、いえ!突然来たのは僕らなので!!」
「広い家アルなー。ユキ姉一人で住んでるアルか?」
「え?はい、まぁ。あ、良かったらお茶でも。お茶菓子もどうぞ。」
「す、すみません!お気遣いなく!!」
「遠慮しないでどうぞ。頂き物なんですけど、一人じゃなかなか食べきれなくて。」
「キャホーッ!!」
「こら、神楽ちゃん!」
遠慮のない神楽ちゃんに呆れつつ、ふと違和感に気付く。
目の前に甘いものがあるのに、銀さんが動かないんだけど。
さっきから一言もしゃべってないんだけど!
なんかずっとユキさんを見てるんだけど!?
「ぎ、銀さん?どうしたんですか?」
「銀ちゃんトイレアルか?」
ユキさんも不思議に思ったのか、銀さんに視線を向け、首を傾げる。
「坂田さん?」
「っ!」
銀さんは息を飲み込む。いつもと違う雰囲気に僕らは首を傾げながら、様子を伺う。
「あ、あのさ!」
「はい。」
「い、依頼は100%成功って聞いたんだけど、」
「はい、なんとかやらせて頂いてます。」
…心なしか銀さんの頬が赤い気がするんですけど。
「お、俺から依頼があるんだけど受けてくれねーか?」
依頼?そんなのなかったはずだ。何この空気。
「えと、内容にもよるんですけど、それでも宜しければ。」
なんだろう?なんかこの銀さん気持ち悪いんだけど。
か、神楽ちゃあぁぁぁん!!食べてばかりいないでこっち向いて!
「お、俺の!」
俺の奥さんになって下さい!!
(えぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!??)
(何言ってるんですか銀さん!?)
(えーと、期限は?)
(ユキさん!?)
(一生お願いしまっす!!)