OZも落ち着きを取り戻し、温泉が噴き出すなか行われたおばあちゃんのお通夜兼お誕生日会。
皆で健二くんと夏希をからかっている。
「だいすきです…!!」
ヒューッ!なんて冷やかしてチューしろチュー!!とか言ってる。…下品だ。
皆楽しそうだなー。そんな皆を少し離れて眺める。普段あんまり騒ぐ印象のない理一さんまで一緒になっている。
それにしても理一さんは格好良かった。
「ん?…ちょっと言えないとこ。」
あの不敵な笑みに顔には出していないが、内心悶えていた。
私と理一さんの関係は親戚。多分、理一さんからしたら妹くらいの認識。一回り以上違う歳が歯痒くて、悔しい。今日が終われば、また離ればなれになっちゃうのに。私はまだまだ子供で、臆病だった。
万助おじさんに貰ったイカ焼きをほうばりながら、柱に身を預けて縁側に座り込む。夏らしい暖かな風が簾を揺らす。風鈴の音に耳を澄まして、めを閉じた時だった。
「ユキ、写真撮るってさ。」
「理一さん…」
靴を脱いであがってきた理一さんを見て、慌てて口元を確認。イカ焼きのタレついてないよね?
「写真?」
「記念写真だってさ。行こう。」
イカ焼きをお皿の上に乗せ、机の上に避けておく。理一さんは立ち上がった私をしげしげと眺めて微笑んだ。
「なーに?ニヤニヤしちゃって。」
「ニヤニヤって…。いや、浴衣似合ってると思ってね。」
「!っ…、や、やだなー理一さんたら。」
夏希と色違いの浴衣。誕生会のために新しく拵えたもの。
「さ、行こっ!皆待ってるよ!」
絶対この人百戦錬磨だ。そんなセリフさらっと言わないでよ。いつまでも諦めきれない。
「…本当なんだけどな。」
少し眉を下げて困った顔をする。そんな僅かな変化にも反応して、顔が熱くなる。返答に困って視線を泳がせていると、突然腕を引っ張られて移動する。背中に壁が当たる。
「理一さ…」
「ホント、似合ってるよ。」
目の前には理一さんがいて、状況が理解できない。いつの間に持ってきたのか、手には朝顔が一輪。そっと頭に付けられ、耳元で囁かれる。
「ホラ、な?」
頬をひと撫でして少しだけ離れる理一さんから、目が離せない。頭が働かない。
再び近づいてきた顔に、息が止まる。額が合わさり、伏せられた視線がこっちを向いた。
「……嫌だったら、押し返せ。」
そっと唇が重なった。
嫌なわけない。ずっと、ずっと好きだった。その思いを込めて、目を閉じて理一さんの服を握った。
離れた唇、少し荒くなった息で理一さんを見つめる。
「はっ…、ご、ごめんね…?」
「……、」
すぐ近くで私たちを呼ぶ万理子おばさんの声が聞こえる。
「…、い…」
「…」
「イカ焼き、食べたばっかだから…」
「……………ぶっ」
「え?」
「くくくっ、今それ言う?」
「え?だ、だって…!」
「あー、断られたかと思った。」
「ちが、…え?」
「もういいよ、分かった。」
笑いが収まったのか、もう一度顔が近づいてくる。
「…好きだ。」
心臓が煩い。顔が熱い。自然と涙が溢れてくる。
返事をしようと口を開くが、それは声にならず理一さんに呑み込まれた。
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(折角だからばあちゃんに報告だな)
(…うん)
サマーウォーズを見て衝動的に書いた。理一さんがカッコ良すぎる。
この後↓
(理一ぃ、アンタ漸く言えたの?昔から好き過ぎて危なかったもんね。)
(え?)
(アンタが寝てる時に…)
(わあぁぁぁっ!!)