君の欠点

私が彼を初めて見たのは2年になってすぐのことだ。友達に連行されて行ったテニスコートで彼はとてもキレイなテニスをしていた。容姿はイケメン、聞いた話では性格も優しいらしく、文句のつけどころのない完璧な男の子だった。できた男もいるもんだ、と関心していた。
しかし彼の決めゼリフを聞いた次の瞬間、私の彼に対する印象は180度変わることになる。

「あー、エクスタシー!!」

なんつー残念な人なんだ。格好良いとか素敵とか、全てが吹っ飛んだ。周りがキャーッ!!と歓声をあげるなか、私一人、すごく可哀想なものを見る目をしていたと思う。これさえなければ完璧なのに。天は二物も三物も与えているのに、大きな欠点まで与えていたとは。非常に残念である。

そして今の私はあの時以上に憐れんでいる目をしているだろう。

「す、好きやねん!!!俺とつ、付き合うてくれへんか!?」

女の趣味まで悪かったとは。
なんて残念な男なんだろう。これが罰ゲームとか、冗談とか、お笑いのネタとかであったのなら普段割と無表情な私でも、最高な笑顔になれる気がするのに。非常に残念なことに彼の赤い顔が、真剣な目が、私の涙腺を刺激する。残念すぎるだろう。

なんで私なんかに告白してるんだ白石蔵之助。

「、申し訳ないんだけど‥‥、お断りします。」
「‥好きな奴でもおるんか‥‥?」
「いや、そういう訳じゃなくて。白石くんには城ヶ崎さんみたいな人のほうがお似合いだよ。」

城ヶ崎さんとは、白石くんと同じクラスの美少女だ。濃すぎない上品なメイク、フワッと香るほのかな香水、ふんわりとした雰囲気、毎日違うアレンジのされた髪、女らしいスタイル。文句のつけどころのない美少女だ。白石くんと仲良さげに話しているところを何度か見たことがある。

「嫉妬してくれてるんか‥‥?」

嫉妬?違うよ。

「心配せんでもええ。俺はユキだけやで?」

なんか名前呼びになった!?何でや!!‥いかん、うつった。私も混乱しているらしい。

「キッカケはユキの切ない目や。」

目?

「あの目を見た時から、自分のこと気になってしゃーなくてな。」

もしかしなくても残念がって憐れんでいたときですかね。

「でも、漸く分かったわ。」

分かってなくね?

「ユキ、なーんも心配あらへん。」

心配だらけですけど。

「俺と付き合うてや。」



その瞳はまっすぐで、最高に格好良いのに。相手が私ということが残念でしょうがない。

「‥‥‥ごめんなさい。」

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(不安なんか‥‥?心配あらへん。俺はユキだけや!)
(いや、だから‥‥)



そしまた繰り返す。

アノトキノボクラを見て書きたくなった。謙也と財前もそのうち書きたい。